いつも通りに出勤し、しばらく仕事をしているうちに、右肩が「普通ではない」痛みを訴え始めた。

肩の骨を上から押されているかのような、重さと痛み。それは今まで経験のない痛さであった。

慢性の肩こり患者である私には、痛みの位置と種類から、これが肩こりではないと分かる。

しかし原因が分からない。試しに肩を回してみたが効き目はない。

こんな時に頭に浮かんだのは、以前、夫から聞かされた話。

『あるOLの患者さんがな。どうにも肩こりがひどいってことで病院に来たんだよ。調べたら乳がんがリンパ節に転移しまくっててなぁ……。3ヶ月前の会社の健康診断では何ともなかったって言うのにな』

その話が浮かんだ時、私が感じたのは恐怖や不安ではなく、「余命宣告されたら、あれとこれとそれをやらないとなぁ」という残りの人生計画だった。

母親に「余命宣告された」なんて伝えたらパニックとヒステリーの発作を起こすだろうな。だが生命保険の1つは母親が保険金の受取人だから伝えないわけには行かないしなー……。

相変わらず痛い肩を庇いながら、そんなことを考えつつ昼食をとっていたら。

食堂とドア1枚で繋がっている女子更衣室から、休憩を終えた後輩が出て来て、去って行った。


途端に肩が軽くなったのである。


その時、私の脳裏に浮かんだのは、霊感のある某漫画家さんの話。

『私は霊感はあるけど、除霊するほどの力は無い。だからヤバい霊に憑かれたら、人混みの中を歩く。そうすると、より憑かれやすい人の方へと霊が移動するから、勝手に離れて行ってくれる』

今日は来店客の多い日。

お客さんと一緒に霊がやって来た→私に取り憑いた→後輩に取り憑いた。

…………。

いやいやいやいや。まさかねそんな。

…………。

ほら、後輩も元気そうだし。いつもと様子も変わらないし。

…………。

だけど本当に、あれ以来肩の痛みが無くなったんだよなぁ…………。