「自爆営業」という物騒な用語を見た。
 「公開処刑」という、皆の面前で叱りつける行為は前から知っていたが、どちらもあってはならない行為である。

 厚生労働省は2025年11月17日、労働政策審議会雇用環境・均等分科会でパワーハラスメント防止指針の改正案を示し、この改正案で、商品の買い取り強要等、いわゆる「自爆営業」が、一定の要件を満たす場合にはパワーハラスメントに該当し得ることが明記された、という。
https://www.mhlw.go.jp/content/11901000/001595724.pdf

 公的な書類でこんな物騒な言葉が使われるとは、驚きである。

 自爆営業が大きな社会問題となるきっかけとなったのは、2019年の日本郵便のかんぽ生命保険をめぐる一連の不正販売問題で、金融庁の行政処分にまで発展したということであるが、従業員に不要な商品の購入を強要したり、ノルマを達成できない場合に自腹で契約を結ばせたりする行為はそれ以前からあったのではないだろうか。

 労働基準法第16条は、使用者が労働契約の不履行について違約金を定めたり損害賠償額を予定する契約を禁止しており、ノルマ未達成のペナルティとして自爆営業を課すことはこれに抵触し、また、例えば購入代金を賃金から控除すれば 賃金全額払いの原則を定めて同法第24条違反にもなる。

 労働契約法で見ると、労働者に過度な経済的・心理的負担を負わせることは、安全配慮義務(5条)違反と評価される可能性があるだけでなく、同法第3条第5項により、達成困難なノルマを設定することは業務命令権の濫用、同法第15条によれば、ノルマ未達成を理由とした懲戒処分があればそれは懲戒権の濫用として無効となり得るのではなかろうか。

 そして、今回のパワハラ防止指の改正である。

 自爆営業は、労働者の経済的・精神的負担を強いる違法行為であり、労働基準法、労働契約法、そしてパワハラ防止指針のいずれの観点からも問題である。また、他にも違法となる点は指摘され得るのではなかろうか。

 従業員が安心して働ける職場環境を構築することは、企業の社会的責任であるとともに、持続可能な経営基盤を築くことともなる。
 自爆営業という悪しき慣行がもしあるとすれば、直ちに根絶しされなければならない。