――東京地裁令和7年6月25日判決で考えたこと

 キャバクラにはご縁がない、テレビや映画でしか知らないのだが、こんな判決を目にしたので(*1)、想像を交えて、楽な仕事で高い料金?という言説についても、少々考えてみた。

 キャバクラで働く女性キャストの働き方をめぐっては、長年「業務委託か、労働か」という議論が続いている。東京地裁令和7年6月25日判決は、この問題に加え、現代社会で見過ごされがちな感情労働の価値についても再考を促す内容ではなかろうか。

1 判決の概要
 本判決は、名目上は業務委託契約とされていたキャストについて、実態として店の指揮命令下で勤務時間や接客方法が管理されていたとして、労働者性を認定した。また、賃金から交通費等を差し引く運用は、労基法の賃金全額払いの原則に反し無効と判断した。

2 経営側が業務委託契約を選ぶ理由
 経営側が業務委託契約を用いる背景には、社会保険料負担や労働時間規制、解雇制限といった法的義務を回避したいという事情があるようだ。
 しかし、契約形式によって「感情労働」を含む実態ある労務提供の存在が左右されるわけではない。

3 業務内容・報酬と感情労働
 キャストの業務は、外形的には「隣に座り、飲食し、会話をすること」に見える、かもしれない。しかし実際には、常に笑顔を保ち、相手の感情を害さぬよう言葉を選び、時に不快な言動にも耐えながら場の雰囲気を維持するという、高度な感情管理を伴う仕事ではなかろうか。

 このような感情労働は、キャバクラに限らず、コールセンターのオペレーター、客室乗務員、介護・看護職、保育士、接客業全般、さらにはクレーム対応を担う窓口業務などにも広く存在する。これらはいずれも、感情を制御し、他者の感情に配慮し続けること自体が労務提供の要となる業務形態である。
 キャバクラについていえば、報酬が高いかどうかという印象論で、感情労働としての負荷や労働者性が曖昧になるはずもない。

 本判決は、ナイトワークという特殊な業界であっても、感情労働を含む実態ある労働が存在すれば、労基法の適用を免れないことを示した。当然と言えば当然である。
 業務が軽そうに見えるかどうか、料金が高額かどうかではなく、そこで働く人(労働者)がどのように管理され、拘束されているか、そこを見なければならない、のであろう。

*1 https://www.sankei.com/article/20250625-KMTH4HDOKZNP5E5VTL2DJZAMRI/