稲葉麻由子さん出演のオブキ改を観劇。
いつもなら、心打たれたとか、考えさせられたとかって書くのだけど、いやぁ、この舞台は、それがない(笑)。

でも、これは悪い意味ではなく、もの凄く良い事で、大変なこと。
普段、どうしても自分を投影したり、セリフの一つに引っかかったりとするが、そうなると何もかも忘れて、と言うのが出来ない。非現実、日常から離れたくて、舞台というものを観に行く面もあるのに、結局、物語を観て現実世界に戻されている。
それが、オブキ改にはない。現実世界なのに、非現実的。素直に笑って余計なことは考えないで済む。映像作品ではない言葉も使われ、舞台だなあと実感。
初めて舞台を観に行くよって人にオススメしたいと思う作品。
たぶん、映像化したらつまらない作品になってしまうのではないか。そう思うだけの、「舞台映え」するキャラクターたち。
一人として、忘れられるキャラがいない。この人たち、夢に出てくるんじゃないかと思ったくらい。
稲葉麻由子さんの演じた役は、そんな中では少し大人し目に見えるくらい。しかし、少しずつ見せた怖さ。女性の嫉妬、まさに愛憎。愛と憎しみは表裏一体。それを表現しきった麻由さんはやっぱり凄い。なにより、あの非現実的な空間で、ある意味、1番現実的な役柄。それでも世界観に溶け込み、現実にある恐怖を観る側に植え付けた。世界観に溶けこんでいたのは、眉毛のない顔くらい。笑い溢れる舞台の中で、ひと振りのスパイスでした。
最後、欲に負けずに生き残った姿は、昨年、同じ萬劇場で観た「手を握ることすらできない」のラストシーンにも通じた。どんな形にしても、生きなくてはダメなんだ。自分は孤独だと思っていても、生きていたら孤独から開放されるかもしれない。それでも、そんなわけないよって言うかもしれない。でも、そんなわけないよって言い切る方が非現実的だと思う。
大丈夫、あんなワガママなオブキでも友達出来たんだから。オブキは教えてくれた。とにかく動くことを。
頭に来ても、あのラジオブースで愚痴を言ってるだけだったら、きっと友達は出来なかった。自分で動いたからこそ、友達が出来た。時にはワガママでいいじゃないか、人間なのだから。
思えば、最近、舞台を観に行って、役者さんとお話する機会が増えた。今考えると、自ら動いたから。おかげで楽しい。本当は可能なら一緒に写真撮ったりしたいけど、そんなお願いしていいのか分からず、一度も言ったことがない。今回もカメラ持っていったけど、プロマイド売ってたから、撮影ダメだろうと思ってお願いしなかった。今度、出来そうな時はお願いしてみようかな。やっぱり、動かないとダメだよね。
ちなみに、1番友達になりたかったのは、小山さん演じたゴスヨでした。
前作も観たかった。残念。
次の作品も期待してます。