りこのブログ

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   ピグパ のコミュにも書いたが再度ブログにも載せたいと思う。終末期の葛藤を記録に残して置きたいという思いと、こういった自然の看取り方もあるのだということを知ってもらいたいからだ。


  もうすぐ98歳になろうとしている祖母が危篤状態だ。看取るために現在私は、ホームで寝泊まりしている。肺が弱り無呼吸を繰り返していたが、驚異の回復力で呼吸が安定して持ち直している。意識もある。今日は水分をとろうとして無理だったが、濡らした脱脂綿を舌にあててやると、しゃぶろうとするので食欲はある。飲み込む力がないのだ。

「呼吸が回復してきたので、点滴をお願いできませんか」と先生に相談してみた。

「点滴をすると長くなるし治る見込みもないよ。それに切るタイミングがわからないよ」と言われた。意味がわからなかった。祖母は意識もあるし、食欲もある。ただ単に飲み込む元気がないだけだ。まだ生きようとしているのに勝手にこちらが治らないと決めつけるのか。 このまま何もせずに見殺しにするということ? 納得がいかなかった。

「長くなっても家族が面倒みますので、ちょっとだけでも点滴をお願いします」というと、先生は少し考えてから「もちろん点滴はすることは可能ですが、延命治療になりますよ。そうなると簡単に苦しそうなので辞めてください、と言っても辞められませんよ」と話してくれた。

延命治療…点滴は延命治療になるのか。そんなことは思ってもみなかった。延命治療のイメージといえば、意識もなくなっても無理矢理人工呼吸したり胃に穴をあけて栄養補給する胃瘻などのイメージだった。祖母はうつろだが、まだ意識もあるし本人はまだ生きようとしていた。話によると老衰で衰弱した体に点滴で補給しても栄養とならず、ただの水分にしかならないらしい。そうなると余計な水分で唾はからみ、呼吸はくるしくなるうえ体はむくれて、辛い状態が長く続くのだそうだ。点滴したからといって飲み込む力が回復するわけではないのだ。そしてそこから先は先生は何もいわなかったが点滴治療をはじめて、途中で中断することは医療機関での殺人になってしまうということなのだと思う。時には眠りながらでも食べたい時は食べ、食べたくない時は無理しない。そうして脱水していき、枯れ木のように痩せ細って亡くなるのが本人は一番楽なのだ。 

  もしかしたら人は自分で命を閉じる力を生まれた時から備わってるのかもしれない。年をとって食べれなくなるということは、当たり前の自然なことなのだから。

  私たち家族は点滴をしてもらうことは辞めた。それは祖母の死を受け入れるという事だった。

  青い空の下、てけてけ、ぴょこぴょこ、紐に繋がれた茶色の毛の塊が飛び跳ねて、右へ左へ忙しなく動いてる。リードを握るその手はこれもまた右へ左へと持ちかえて、すれ違う子供や自転車に注意を払いながら、手繰っては短くしたり伸ばしたり。そんな飼い主の苦労を知ってか知らずか、ときおり黒い瞳でチラリと様子を伺うと、鼻先をふんっと持ち上げて歩いていくわたしのムスメ。
 風がぶんっと時折なびいたら、枯れて毛羽立った白いチガヤを足先にくっつけて、じれったそうに片足をあげたり下げたり。ようやく取れたと思ったら、今度は鼻につけてしまい、顔洗うかのように前足でもじもじ。あまりにも可愛らしくて様子をみていたけれど、それでは可哀想と思い手助けをしてやると、チガヤと同じように白くなった鼻の毛が目についた。
「ちみも歳をとりましたなぁ、ちゃこ君。」
「なによ。あたしはまだまだよ!」
ひょこりと体制を立て直して、何事となかったように元気にスタコラ。
  昔と比べて、だいぶんと毛も薄くなって肌色の皮膚が見えていた。前より背中も丸まって、元気よく歩く日よりも、よたよたと歩く日が増えた。
「肥満細胞腫ですね」
透き通った声ではっきりと、言われた。
脇の下の小さな虫刺されが治らないと思い、動物病院で検査してもらった。結果は癌だった。ただのデキモノだと思っていたので、相当なショックをうけた。先生からは、薬物療法か手術かの選択を迫られた。
  無理に腫瘍をとらなくても自然にまかせたほうがいいのではないか。老犬だし、もう長く生きて後2.3年なのだから、痛い思いはさせなくてもいいんじゃないか。そんな葛藤が胸をよぎる。セカンドオピニオンで漢方治療の先生にも相談してみた。転移もみられないので、手術後の漢方治療を勧められた。そして、夫とも相談して麻酔のリスクも含めて、手術をすること決めた。考えて決断した事だけど、正解かはわからない。冷たく硬直したちゃこちゃんを想像すると、恐ろしさで泣きたくなる。ぐっと堪えて心に涙を溜めると、じんわりと体に温かい哀しみが広がった。こんな日は特にダメだ。青い空の下、草花が、飴色の光を浴びながら、やさしい風で身体を泳がしている時。ちりばめられた新緑の香りに茶色の毛の塊がふと立ち止まる時。

  どうか手術が成功しますように。     

                                  りこ