会社をやめて一念発起し、
スナックをやる夢を見た。
店の名は「葵」。

縦長白地のネオン看板に、
習字書きで赤く「葵」。
外にはプロパンガス、
黄色いビールケース、
焼き物の煙…。

田んぼに囲まれた四辻に
その安っぽい店はできているのだが、
いつまでたってもオープンしないオレ。

軽トラに乗った農家のばあさんが、
「あ~ら、まだ始めてないよこの店は」
と言いいながら、いつもオレの様子をうかがい立ち去る。

店の横には、なぜか写真入の看板が立つ。
「伝統芸能」「労働者の手」「農民の笑顔」
などと書かれている。
思うにこれからの自分のやりたいことの
決意表明であるようだ。
なんだそれ。

ばあさんにからかわれるたび、
その看板を眺め、
「ふ~っ」とため息をつき
店の厨房に入るオレ。

これまでの経緯を振り返り、つぶやく。
「忙しい。メニューが開発できない」。

思えば、妻不在でさまざまな料理にチャレンジしたものの、
やっとやっとで自分ひとり分が作れるようになっただけ。
オレは、なぜあの時やれると思ってしまったのか…。
背中をつたう油汗。

思い出すのは昨晩やってきた
男の話(たぶん会計士かなんかでアドバイスに来た)。
「マスターそんなことじゃ、先が目に見えますぜ」

「まず、ここいらにスナックができたとありゃ、
地元の女の子がほおっちゃおかない。
私をパートでやとったら、お客さん増えるからって、
口八丁手八丁で近づいてきて、
マスターもまあそんなものかと、
雇っちまう(映像はなぜかチェ・ジウ)」。

「そんでもってマスターはめんどくさくなって店にこない、
そしたらやつらの思う壺、地元の友達呼んで
毎晩パーティーよ(映像フィリピンパブ)。
友達からお金はとれないってんで、
売り上げはちょぼちょぼ、仕入れは火の車」。

「そのうち、マスターは働かないからって
女の子や地元の仲間たちに追い出され、
店をのっとられるのがオチですわ。
だいたいマスター、スナック行った事ないんでしょ。
まあ、女の子雇ったら終わりですよ。終わり」。

そこらで、場面が変わり
市街地を見下ろす山の中腹にできつつある
「スナック葵」。

隣家には亀田三兄弟のような
地元の有名な変わり者ヤンキー親子がいて、
お寺の鐘を気球代わりにして空に飛び立つ
実験を繰り返している。

ある日、人が乗ることはできなかったものの、
釣鐘だけを空に飛ばすことに成功。
空に立ち昇っていく3個の大きく重い釣鐘。
「落ちてきたら大変だべ」とか思いながら、
厨房でフライパンを振り続けるオレ。

店のオープンはまじか。
店にある食材は、なぜか
前の会社のイベントでよく販売していた
牛丼の元2食分。

製造委託した牛丼の元を
出すわけにもいかないし、とフライパンを振るオレ。
作っているのは、味の素チキンコンソメ味を
ベースにした焼きうどん。

ソースを使わずに、うどんの白さを生かした
一品に仕上げたいようなのだが、
人類が始めて体験するような味わい。

そこに駆け上がってくる一台の
銀色の軽自動車。
脱サラを心配してくれていた
元人事部のバンブー田氏。
なぜかスーツ。

「ねえ、本当にだいじょうぶなの?」
といつもの感じで話しかけ、
何か食べていこうとしている。
が、焼きうどんを出すか、
牛丼を出すか試案するオレ。

焼きうどんを出した方が、
率直な意見が聞けていいのだが、
牛丼を食べてもらった方が、
この場はしのげる…。

こんなんではダメではないか
ああああああああああああ!

       ★

といったあたりで、
お昼寝から目が覚めました。

他に、釣鐘が「ドーン」と落下して
大騒ぎになるエピソードとかもありましたが、
だいたいこんな感じ。
寝て起きてすぐ書き留めたので、
リアルです。

え~、スナックはやりませんが、
会社を辞めたのは事実です。
キッチンチナ家。高知に移住しますよ。
たぶん11月頭。

妻子とも10月半ばに荷造りに帰ってくるので、
千葉・東京の皆様、まだまだよろしくお願いします。

ではでは。