Farmer's Market in Noosa
グェン・パースンさんは私の20年来の友人。タスマニア北部の農場に生まれ、元気活発な少女時代を過ごした彼女は、メルボルン大学で美術を学ぶ、そこでご主人ピーターと出会い結婚。5人の子供を育てながら、タスマニア大学陶芸部で学び、ギャラリーを開いたエネルギッシュな人。商工会議所のチェアマンを長年務めるピーターは、誰もが敬う人品卑しからぬ真面目な仕事ぶり。彼女も5人の子供達を、医者、会計弁護士、金融マン、看護士など世界に羽ばたく人材を育て上げたあっぱれ母さん。私が40人もの留学生を次々に送り込んでも、いつもあたたかな上品な受け入れ家庭をして頂き、どんなに沢山の日本の子供達が彼女の家から学び巣立ったことか。

そんなパーソン家に、青天の霹靂が起こったのです。セミリタイアしたピーターに、14歳下の彼女ができ、出て行ってしまいました。ショックにうちのめされた彼女は65歳。日本へ1年近く滞在して、心を癒した時も、ただ人生の皮肉を思わざるを得ませんでした。そんな彼女が4年前、全てを清算して、ブリスベン近郊のNoosaヌーサに引越しました。

74歳の彼女が「Slow Foodの流れが強いこの地域の、”Food and Wine Show”があるからいらっしゃい。あなたの日本料理を友人達が楽しみにしているから。」と声がかかりました。私は彼女の再生の町として選んだヌーサに興味をもち、又“Slow Food”の“Food and Wine”というものもどういうものか。「I will go!!」と即座に答えました。

関空から8時間、ブリスベンの空は青く、風はさわやかでした。そこから彼女の家まで、バスで移動。なんとバスは家の前まで送ってくれます。ヌーサはユネスコが環境保全地域として認定しているのです。環境を維持する為の街づくり。どこまでも続く白い砂浜と青い海。そこに入り込む川に沿って住宅が開かれ、その背後には農家、牧場、ワイナリーが広がります。温暖な気候を利用したフルーツ(マンゴー、パッションフルーツ、バナナなど)熟れたトロピカルフルーツが店先に並び、Slow Food協会のメンバーの農産物は、日曜日の朝6時から町外れのFarmer’s Marketに新鮮な味を求めて沢山の人が朝早くから集まります。農産物のみならず、ジャム、チャツネ、カレーペースト、そしてホームメイドケーキやパン。次から次へと店に並ぶツヤツヤの農産物は私を心の底から幸せにしてくれました。そして若い生産者の方々が数多く、そのさわやかな笑顔がプロダクトに対する愛情と誇りにあふれているのです。一軒一軒のテントの前にはどのように育ってきたのか写真の説明があり、農地を健全に守る為、地域の人達に美味しいものを少しでも楽しんでもらえるような仕組みが出来上がっています。いつの間にか私のグリーンバック(リサイクル用エコバック)もいっぱいになり、生産者の方々や、買い物をする人達のはずむ会話が「スローライフ」。オーストラリアでは「grassrootsof life 」の素晴らしさを心ゆくまで味わった心地よい
ひと時でした。
わが友人グェンさんが選んだ再生の地ヌーサ。町にあふれる優しい香りと、地域の人々が大切に守りぬいている環境と食、日曜日浜辺はいっぱいの人だったのに茜色に深まる大きな夕陽が沈む頃、静かな波の音だけが繰り返し耳に心地よく、気づくと何ひとつごみらしきものは浜辺に残されていない・・・あんなに小さな子供の頃から守るべき「grassrootsof life」を教えられて育つこの国の豊かさに心打たれた旅でした。
aiko