コンポーネントを用いたステレオスピーカー再生はゼネラルオーディオの市場変化により相当に先鋭化しており、
ハイエンド帯では超高価格かつ超弩級のものが目立ってきている。

そしてそれらの相当に巨大なハイエンドスピーカーの内部構造の紹介を見てみると、
大きすぎて一塊で作ることができないし、輸送も困難であるため、いくつかに分割して作られ、オーナーの設置場所でそれらを合体させて1つのスピーカーとして機能するというものも多い。
修理時のことなども考えるとそれは合理的な手法なのだが、そもそもの話として大規模なスピーカーシステムの場合、ツィーターからウーファーまで全ての振動板を一つの物体に納める必要があるのか疑問になってくる。

スピーカーはやはり100kgを超えると扱いがかなり困難になってくる。
オーディオ趣味はやはり音を良くするための試行錯誤が楽しみの中の相当なウエイトを占めているだけに、設置場所の調整を行うのが困難なことは良いことではない。
趣味性の高い弩級スピーカーを買ったらオーディオ趣味の醍醐味の一つであるセッティングが満足にできなくなったというのでは本末転倒とも言える。

そのため、ハイエンドスピーカーの中にはウーファーのみを独立したタワーにして2個体で1チャンネルとするものもある。
2個体に分けるのはそれなりにメリットが多い。ウーファーは振動板の反応が比較的遅いので、タイムアライメントを考えればリスニングポイントに少し近めの方が良いが、2個体だとウーファーのみ近づけることが容易にできる。
そして低域は部屋のモードに強く影響される帯域であるが、モードの負の影響を緩和するような位置が存在する。つまり中域高域で具合の良い設置場所と低域で具合の良い設置場所は異なることが多いが2個体だとそのあたりをフレキシブルに対応できる。
そして2個体に分ければそれぞれの重量を減らすことができるためセッティングのしやすさも改善が望める。

という理由で2個体のメリットが多いように考えているが、ホームオーディオにおいて個人的な理想をしっかり叶えてくれる機種はなかなかない。
YGのハイエンドのようなウーファー別個体の場合、規模が大きくなりすぎてしまっており、そもそも別個体であってもそれぞれの重量が大きすぎてセッティングのしやすさの改善にはつながっていない。
Genelecのようにブックシェルフのスタンドにもなるウーファーをオプションで販売する手法はセッティングのしやすさは期待できる。だがオプションウーファーが別売りのため、ブックシェルフだけでも成立する仕様になってしまっている。なので別個体の重低音専用のウーファーが存在することによって低域〜中低域を担うウーファーへの負担を軽減するという効果を期待できない。

自分の考える理想の2個体は合計4wayスピーカー構成で
メインの個体には直径20cm未満の応答が良く歪みの少ないウーファーを搭載し、ある程度の指向性を持った帯域の低域を再生させる。バスレフで無理にローエンドの帯域の拡張をしようとせず、50Hzくらいで一気に鳴らなくなるようなものでいい。要は周波数帯域は狭いが制動が良く効くウーファーを搭載する。
そして別個体に直径30cm以上のサブウーファーを搭載し、50Hz以下の再生を担当させる。こちらは制動よりも周波数特性が重視の性能とする。そんな仕様にすると個人的には良いスピーカーな感じがしてくる。

結局のところこれは素人の考える最良でしかなく、現実的には大してメリットがないのかもしれない。
ただそういった物が出てこないのは机上の空論だからというだけではない気がしている。

別個体はミッドとウーファーの位置関係をオーナーが設定しないといけないので敷居が高い。
そしてこのスピーカー専用に設計されたサブウーファーは開発コスト的に非効率である。
さらに別個体にするとモニュメントとしての優美さが損なわれる。
などの事情があるのかもしれない。

というハイエンド界隈のスピーカーを見つつ自分の今後欲しいと思えるスピーカーの理想像について思いをはせてみたというのが今回の記事であった。
以前に考察した事項であるが、
室内音響学的な観点で言えばリスニングルームはある程度の広さを取ることが望ましい。
ただ自宅敷地内で大きな面積を確保した部屋がリスニング用途のみにしか使えないのでは効率が悪い。
富豪の豪邸のように自宅の延床面積や予算に余裕があるとしても、部屋の用途が限定されすぎてしまえば利便性の低さゆえにリスニングルームへの足が遠のいてしまい、リスニング体験自体が縁遠いものになりかねない。
そのためリスニングルームとは言え、セカンドリビング的もしくは書斎的のようなリスニング以外の用途としての使い勝手の向上が必要と言えるのだが、そのための課題の1つとしてリスニングルームの防音により静かすぎる環境が他の用途として使いづらくしているのではないかと問題提起をした。

ちょうどフリーアクセス解禁となった日本音響学会誌の77巻5号が音環境に関する特集であり、それに対する根拠のある知見が多分に含まれていたためピックアップしてみる。

引用雑誌は上記の通りで
明日の図書館の「音」——対話と体験によって循環をつくる——

寺澤 洋子

岡部:新しい図書館を作るときによく行政側から相談を受けるのは「賑やかとうるさいをどうやって区別したらいいのか」ということです。
社本:賑やかとうるささの区別,僕の個人的な仮説ですけれど,音の響き具合で,マイルドになりうるささが低減するというのが一つあります。
もう一つは,どこから音が鳴っているかも関係しているように感じます。人の空間は前方向に開けているそうです[18]。後ろの方で喋るのは賑やかだなと感じるけど,目の前で喋っているとちょっとうるさく感じるとかありませんか?
岡部:なるほど確かに。目の前で奇声を出されるとうるさいけれど,隣のテーブルで議論しているのは賑やかだなと感じますね。
寺澤:騒音レベルの高くない音がたくさんあると,賑やかだと思います。沢山の音が,クラスタというか,面で鳴っているイメージです。でもそれだと,ざわめきと区別できない。ざわめきは雑踏とか足音などでも感じられますが,賑やかには,元気や活気があって,コミュニケーションがいろいろな場所で起こっている感じ,多方向での人の声の掛け合いが不可欠だと思います。それがあるのが,理想の賑やかな図書館でしょうか。

引用終わり

絶対的に静かなだけの図書館ではなく、ある程度コミュニケーションが取れたり、知的体験ができるようなスペースなどを作りつつ、それによって音が生じたとしても書物を読むのに支障がないようにするにはどうすればいいのかというのを考察している上での見解である。
定位感がない、もしくは後方からの音、残響成分、もしくは間接音の多い音は環境音としてうるさく感じにくいようであり、ノイズ自体が多くてもそれぞれが大きい音でなければ環境音としては悪くないようである。


さらに同じ雑誌から
コワーキングスペースにおける知的生産性への音環境の影響とそのデザインの考え方

辻村 壮平

オフィス環境を共有できるコワーキングスペース(CWS)のおいてどのような音環境にすると知的生産性が向上するのかを他の論文を引用して総括している。

個人の「知識処理活動」や「知識創造活動」に関しては暗騒音(その環境でのできるだけ音が無い状態)と比べて、「クラシック音楽」や「自然音」を付加した条件の方が心理的な作業効率は高まっている。これに対し,音声マスカは僅かな音量でも作業し易さの印象は低下している。

プロジェクトチームで会議を行う状況に関しては50dB程度の騒音がある状況が一番会議しやすいという結果になっている。さらに知識創造に関する会議では静かであればあるほど会議がしづらいという相関が出ている。

騒音やBGMの音源の種類と会話の弾みやすさに関しては、音楽をBGMとしている場合49dBくらいまでであれば静かな空間であるという印象は保たれているのに対して、音声雑音が騒音である場合50dBくらいからうるさい空間であると感じるという。

打ち合わせのための場所に求める音環境の印象は「いい意味でざわつきがある」,「静かな印象」,「音が漏れない」ことが重要であるという知見が報告されている。

CWS のような空間において,ワーカの意識構造には「静かすぎる不快感」の心理評価モデルが存在するという知見が幾つかの既往研究で報告されている。
①周囲の音環境が“静かすぎる” と,自身が発生する音が目立ってしまう(聞こえすぎる)ため,発話や行動を抑制してしまう。(会議など複数人の場合に相当する)
②周囲の音環境が“静かすぎる” ことによって,普段は気にならないような音に意識(注意)が向き易くなり,気になってしまう。(個人作業の場合に相当する)
③ 周囲の音環境が“静かすぎる” と,音の情報が少なすぎると感じ,聴覚システムが正常に機能しているかどうか不安になる。(災害や緊急時などに相当する)

以上編集しつつ引用

上記から今回一番問題となるのは個人での知識の処理、創造に関してになる。多少の騒音があった方が作業しやすく、騒音なら何でもいいというものではなく音楽や自然音などがいいようである。


2つの論文の情報をピックアップして、リスニングルームでオーディオリスニングを行わない時間の居住性を改善するために必要なことを考える。
・室内が防音により静かすぎるため、そのままだと様々な音に注意が向きやすくなり気になってしまう。
・オーディオ的なリスニングではなくBGM的用途での音楽再生を必要とする。自然音の再生でも良いが、音楽で問題ないのであれば普通に楽曲再生すれば良いのではないだろうか。
・音楽の種類としては音声が入っていないものの方が良いようである(インストゥルメンタル)
・BGMの音量的には40~49dB程度が良いとのことであるが、オフィス用途での話であり、暗騒音のレベルが低いリスニングルームではもう少し低いかもしれない。いずれにしろ利用者本人が煩く感じない音量にすれば良い。
・音源定位としては後ろにある、もしくは定位感がないことが望ましいようである。反響音、つまりは高域が鈍っていて締まりの良くない音が多い方がいいようである。

これらを統合すると、オーディオリスニング用のシステムとは別にBGM用のシステムを用意する必要があるということになる。
オーディオシステムは音像が前方に明確にあるため、作業用のBGMとして集中力を上げる用途にはあまり適合していないためである。
ただBGM用にシステムはあまり優れた特性は必要ないようであり、どちらかというと向いているのは指向性が弱いスピーカーであり、無指向性のスピーカーやダイポール型スピーカーなどが向いているようだ。セッティングに関してもリスニングポイントに直接音をスムーズに届けるというよりも間接音が多くなるようなセッティングにする方が良さそうである。
音源は色々実験すれば適合するものは見つかるかも知れないが、文献である程度証明されているのはクラシック音源である。声楽が入っていないものが望ましい。
音楽鑑賞にとって最適な音量を出すことが近所トラブルになることはもっとも避けるべき事であり、その趣味を持つ人の不幸である。
そして音楽鑑賞中に内外の騒音が入ってくることも上記のもの程ではないにしろ再生音楽のS/N比を悪化させる要因となるので忌避されるものである。

なので基本的にリスニングルームを新規に建設する際には可能な限り防音には力を入れることが多い。

ただ、1度リスニングルームを作ってみた際に、ある面では防音が足りず、ある面では防音が過剰であったと感じる。
そして部屋単位での防音を強力にすればするほど対費用効果が悪化する上に、居住性が良くなるとも限らないという印象を抱いている。

そこで、どういった形の防音であれば必要十分なものとなるのかを今回考察し整理してみようと思う。大抵の防音はそれなりに騒がしい立地での防音が多く、閑静な住宅街でのオーディオを楽しむのに必要な防音というのはあまり考察が少ないので良い機会と考えた。

自分が作ったリスニングルームの防音の気になる点としては以下が挙げられる
・屋内の音はリスニングルームと他の部屋で多少は行き来する。
・沿線の車の走行音は多少聞こえる。
・近所迷惑レベルの騒音にはまったくならない。近所迷惑防止の観点から考えると過剰な防音スペックである。
・車の走行音以外の環境音はほぼ入ってこない。鳥や虫の声、雨音、近所の人の声など完全に防いでいる。

このように十分すぎる位に防音できている面と、許容できる範囲だが十二分な防音とは言えない面があることがわかる。


騒音は音量と透過損失の引き算でシミュレーションできる。
再生音量の平均は人によって異なるが、今回は85dBとする。
ピーク時にはもう少し行くかもしれないが、瞬発的に多少大きくなってもあまり迷惑になるとは思えない。
そして再生音をリスニングルーム外から騒音として聞いてしまう隣人の聴力は30dB以下ならあまり聞こえないと考える。聴力検査で30dBが聞こえていれば正常と判定されるので、そのレベルまで減衰させれば、静かに耳を澄ませばかろうじて聞こえるレベルの音量と考えられるので十分防音されているといえるだろう。
つまり55dBの減衰を目標にすれば近所迷惑にはなりづらいわけである。

距離により音量は減衰される。

引用:日本騒音調査
途中までは距離による減衰量も多いが途中から効率が徐々に悪くなってしまう。
10mで-10dB、20mで-15dBあたりの減衰を利用するのが現実的だろう。

リスニングルームの防音であるが、ダイケンの防音グレードで考えると
引用元:https://www.daiken.jp/product/lp/sounddesign/plan/
30dB 低域減衰  シンプル★防音-掃除機など家電製品や車の音が小さく-
40dB 低域減衰 スタンダード★★防音-他の部屋ではピアノの音が小さな声くらいに-
50dB 低域減衰 プレミアム★★★防音-他の部屋ではピアノの音がひそひそ声くらいに-
くらいの減衰量となる。

防音のボトルネックとなりがちな窓では、シャノンウインドSPGのプレスリリースを参考にすると、
引用元:https://news.panasonic.com/jp/press/data/2021/04/jn210414-2/jn210414-2.html
通常のトリプルガラスサッシは平均-25dB
真空断熱ガラスサッシは平均-35.1dBとのことである。

そして隣の住宅の宅内に騒音が入ってしまうことを想定すると、隣の住宅の防音性能も考えなければならない。これはコントロールできるものではないが、ゼロであるはずはない。
-15dBくらいの防音性能が想定される。

以上の情報から、リスニングルームで出した85dBの音が、10m離れた隣接の家に侵入する時には何dBになっているかを考える。
リスニングルームの防音がダイケンで言うところの-30dBの簡易防音である場合、
リスニングルーム壁の減衰:-30dB
距離による減衰:-10dB
隣接した家の壁の減衰:-15dB
で合計-55dBの減衰量が期待できる。

85dBの再生音だとしても隣の家には30dBにしか聞こえないので、実質的にはほぼ聞こえない。
つまり窓ガラスをしっかりしたものにしつつ、距離を十分取ってしまえば、壁の防音は簡易なものであっても、近所迷惑にはならないと言える。
不要ではないにしても、必須と言えるものではなく、安全域の確保という面が強くなる。

今度は法的に騒音を定義されたものを用いて必要な防音レベルを考えてみる。
環境基本法の規定に基づく騒音に係る環境基準についての告示で地域別・時間帯別での騒音の基準量が定められている。
引用:https://www.env.go.jp/kijun/oto1-1.html
これによると夜間の住宅専用地域では45dB以内にすることが基準となっており、隣の敷地に音が入るまでに45dBまで減衰するとシミュレートした上記に計算と一致する。つまり法的に騒音と見なされない可能性が高いため法的責任に問われる可能性が低いだけでなく、当然のことながらそれは実際にも隣人が騒音として気にする可能性がかなり低い音量だということになる。

ただこのシミュレーションは再生音量が85dBということが前提となっており、それでギリギリ基準値以内というのは安全マージンが足りないと考えることもできる。
なので療養施設、社会福祉施設等が集合して設置される地域など特に静穏を要する地域の基準となる40dBまで減衰させようとするなら室内で35dBの低域減衰(ダイケンでいうところのシンプル防音とスタンダード防音の中間)が必要になるし、一番厳しい地域の基準値内に余裕を持って満たせる程度の防音が必要と考えるなら40dBの低域減衰(スタンダード防音)が必要となる。

換言すれば、しっかり隣との距離を確保しつつ、再生音量が爆音という程の音量でなければ、そこそこの防音(-40dBの低域減衰)で理論的にも法的にも十分だということになる。


では話は変わってリスニングルームを独立した一棟とせずに屋内の一室とした場合に室内に音漏れさせないようにするにはどうすればいいか。
85dBの再生音として距離の減衰は-5dBとすると、-50dB減衰させないと30dBまで小さくできない。ダイケンで言うところのプレミアム防音レベルである。
そして室内防音ドアもその構造だと必要になってくるが-50dBの性能を担保するには相当な特注のものでないと不可能である。
つまり室内騒音を完璧に防ぐのは相当に困難であることが分かる。
困難なものを物量でゴリ押しして弩級の防音性能を付与するか、室内の同居人に多少の我慢をしてもらうか、などの選択肢もあるが、そういった難のある選択肢を取るよりは可能であればリスニングルームを独立した一棟とする方がいいだろうと考える。
自分がリスニングルーム専用棟を良しと考えている根拠の1つがこれでもある。


では今度はリスニングルーム棟の土地に沿った道路で車が通った時の騒音を聞こえないレベルまで防音するにはどうすればいいか。
これは正直難しい。なぜかというとネットに存在する走行音の規制などは高速走行している時の音量であることが多い。ただリスニングルーム棟のある土地は閑静な住宅街を想定しており速度制限と道路事情からして高速走行していることは想定しづらい。
ひとまずトラックの高速走行時の7.5m先で測定したときの騒音が80dB程度に規制されていることから、実際の閑静な住宅街を走る際の騒音は距離による減衰を含めても75dBと考えてみる。そして室内に入ってくる音量は以前までの計算と同じ30dBではなく20dBまで減衰させる必要がある。音楽鑑賞中に入ってきてしまう音としてはかなり絞り込まないとノイズレスな環境とはいいづらい。
そう考えるとリスニングルームの壁だけで55dBも減衰させなければならず、窓も含めるとかなりの減衰をさせないといけないことになる。
道路沿いに防音フェンスを設置すると低域でも-10dB程度の防音効果は期待できるし、コンクリートブロック塀も同程度の防音効果はあるらしい。そういったものを積極的に利用して建物での防音に頼りすぎないような配慮をしてもいいのかもしれない。

それであればむしろトラックなどが滅多に通らない盲腸線のような立地を選ぶなどの工夫をする方が、(立地の選択が可能であれば)良いように思われる。
旗竿地も道路から距離が取れるので良さそうに思われるが、一般的に旗竿地は近隣土地の家屋と近接しやすいので、自室に交通騒音を持ち込みづらくなる代償として隣人に騒音を持ち込みやすくなるという選択を意味する訳であり注意を要する。不規則な用地だったため結果的に旗竿っぽい形になっただけの土地などはいいのかもしれない。
いずれにしろ、一般的に不人気と言われるような土地がリスニングルーム棟に向いている可能性があり、そういった意味では別邸としてリスニングルーム棟を作る場合にコスト削減と交通騒音の削減を両立できる可能性を秘めている。


まとめると
閑静な住宅街で隣人の建物との距離が10m程度確保できる場合
・隣人に迷惑がかからないための部屋の防音は中等度で十分。簡易防音でもギリギリ許容範囲。
・同一棟内の隣室の完全な防音は非常に困難。別棟が理想。
・沿線のトラック走行音の防音はシミュレートが不正確ながら、割と困難と思われる。沿線沿いのフェンスや塀を併用したり、そもそも車が通らない道路の立地が理想。

という考え方になる。
これは防音をどれだけ節約できるのかという話だけでなく、予算が無制限の場合でも考えるべきものである。

強力すぎる防音は室内の開放感がある程度犠牲になってしまう。開放感が失われた部屋は居住性に多少の負の影響をもたらす。
そして防音が完璧であれば良いのかという話にもなる。例えば雷鳴や緊急警報放送など不意な外の情報を全てシャットアウトすればいいのかという問題がある。イレギュラーな音は安全のためある程度聞こえても良いのではないか。よってリスニングルームに音を完全に入れさせないのが理想、というより滅多に入ってこない立地という方が理想的であるように思える。
またリスニングルーム程度の大きさだとどんなに工夫しても部屋のモードの影響は避けられない。低域の再生能力を上げるために効果的なことは低音を透過させて逃がしてしまうことである。完全な素通りなどは現実的ではないが、低域の再生を考えた時に完全防音の部屋がいいのか、そこそこ防音が良いのかというと多少の透過損失が期待できる分だけ後者が有利かもしれない。
仮想のリスニングルームで正面壁をどのようにデザインするかというのは以前から悩んでいた。
なぜならリスニングポジションで鑑賞する際に、毎回その壁と相対するので必然的にその部屋の顔となる主役となる壁だからである。何度もその壁を見る機会が多いので相応に考えられたデザインをすべきである。
一つの発想として、床の間のアレンジを加えたものを以前考えたが、機能として必要なものを具備しつつデザインとして定評のあるものを借りることで一定のデザイン性を担保したかったという動機が否めない。
もう少し機能の面を突き詰める姿勢が足りなかったのではないかと感じ始めているので、そのあたりを少し考えてみたい。

リスニングポジションの正面に坪庭鑑賞用の窓ガラスを設置する発想は維持しつつも、以前の床の間のデザインだと窓の大きさが一次反射面を避けることを目的に細長い小さなものに制限しなければならなかった。
窓に内扉を設置することで窓ガラスの悪影響を排除したいときに閉めればいいという発想だったが、内扉を開放したときの見た目があまり配慮されていなかったし、内扉を閉鎖した時にも窓ガラスの影響を排除できるが内扉自体の音響調整が十分出来ないことも問題だった。
そのためこのあたりの設計をもう一度やり直すことにした。窓の内扉を障子戸のような引き戸にしつつ、引き戸自体を厚みもあり背板もある棚にして組み込んでみる。



これだと内扉を閉鎖したときにも音響処理の自由度がかなり高い上に窓ガラスの悪影響も排除できる。窓ガラス部分を一次反射面と干渉するほど大きくしてもあまり問題ない。

棚型の引き戸を閉めたとき。

ライティングや配色をし直せば分からないが、デザイン性はイマイチなのでその辺りは再考の余地はあるだろう。

床柱をまた付けてみる






胸を張れるほど煮詰められた設計ではないが、生活という側面と音響という側面の双方が相反しづらい設計としては以前よりは改良されている感触はある。
一般的にはスピーカーとリスニングポイントの間の空間の床にはあまり物を置かない方が良いと言われている。特にその3点が作る二等辺三角形に言われることもある。

物というのが剛性が高い物低い物問わず言われる傾向にあり、
自分としても排除した方がすっきりした音になるという印象を感じることがあった。

原因としては反射率や吸音率が変わってしまうことも考えられるが、剛性の高さに関わらず言われるものであり、それだけでは説明がつかない。
反射特性の左右対称性が崩れてステレオフォニックの音像に影響がでるからとも考えられるが、左右対称に物を置いたとしたらすべてが解決するとは思えない。
おそらく物を置いた分高さが出て、その部分の反射音が早く到来することにより、同一音として知覚される直接音の聴感上の印象に影響が出ていることがメインの原因ではないかと思っている。

話題は変わるが、スピーカーからアンプの距離を最小としたい場合、スピーカーの間が最短距離となる。もちろんモノラルアンプを使えばそうとも言えないが、プリアンプからモノラル処理をするケースはあまり多くないので、ケーブルを短くしたいのであればプリアンプのみかパワーアンプも含めてかは別としてスピーカーの間の空間にアンプを置きたいという気持ちはある。

またアンプなどのオーディオ機器をゴテゴテと目立つ場所に置きたくないという感情もある。

その3つの懸念を統合すると、スピーカーの間のどこかに音響的に問題が起こらないようにしつつ、かつ視覚的に目立たないようにアンプを設置できないかと考えたくなってくる。

以前に少し考えたように全て床を下げると建物の剛性が下がるので、一部のみを下げるというコンセプトを応用してアンプを収納する床下スペースを作ると良いのではないかと思えてくる。それは床下を通してケーブル接続もしやすくなるメリットもある。

オットマンの少し向こうにアンプ用床下空間を作った場合

あまり収まりが良くないようにみえる。ど真ん中に穴があるのも邪魔に思える。

スピーカーのちょうど中間に床下空間を作った場合


ケーブルは最短化できるがあまりきれいに収まっている感がない

床の間の下に床下空間を作った場合

収まりは比較的良いが、ケーブルの長さの節約効果はあまりなくなってしまった。
そこまでしてアンプを隠したいのかとも思える。
今回の案はあまり良い物ではなかったようだ。
以前も正式発表されていないながらもJVCから出ると言われていた新しいプロジェクターについて書いたことがあったが、
今回DLA-V90R、80R、70Rが正式発表された。
税込みで125〜275万で、全てのモデルに画素ずらしで8Kを対応しつつ、オールガラスレンズを装備し、レーザー光源を採用している。

正直ずらし8Kやオールガラスやレーザー光源のうちのどれかは80R、70Rでは省略されているのではないかと想定していただけに良い方向でのサプライズ感はある。

8Kはテレビでも高額なだけにローエンドモデルは単純に8Kコンテンツの再生機器としてもコスパが良いのではないだろうか。ただずらしの8Kである上にコンテンツが追加される見通しが厳しいので需要があるかは別の話にはなってしまうが。

認識としては4Kコンテンツをさらにアップスケーリング余裕を持って再生でき、
レーザー光源で俊敏な立ち上がりと長寿命を実現し、
8Kも対応できるであろうにじみの少ないレンズを採用しているという印象で、
今後マイナーチェンジはあるかもしれないが、今購入すれば当面陳腐化はしないであろうスペックと思われる。

4K対応に買い替えるとしたら、ほぼ一択な状態かもしれないが、4K以上の映像コンテンツの利用状況を考えると個人的には急がなくてもよさそうだ。
仮に極上のオーディオシステムと極上のリスニングルームと極上のセッティングが手に入ったとしよう。恐らく完成直後はその音に大きな感動があるだろう。
ただ数年使ってみるとどうか?
最高のものであれば不満に感じることはないかもしれないが、当初のような大きな感動が維持できる訳では無いだろう。その音に慣れて当たり前になってしまえば良い音かもしれないが音質的な感動は薄れていくのは宿命である。
何もこれはオーディオだけでなく他の事にも当てはまる。

飽きてきた場合にオーディオ機器の買い替えを行いリフレッシュさせることはよくあるがリスニングルームの場合そう簡単に買い替えられない。
そういう意味でも響きの可変性の高さを最初から重視して作るべきだという持論は堅持すべきものと改めて思うのだが、その観点から見ると他のことも見えてくる。

音質的音響的に良いことを突き詰めて行くと、究極的なものは視覚的に異質で居住性が微妙なものになる傾向がある。
先の話で、音質的な感動は利用時間とともに多少は薄れていくものだが、欠点の不満感に関しては多くの場合は利用時間とともに不満感が増大する傾向があるのではないかと思う(慣れることもできるという見方もできるが)。

なぜかというと、ある程度オーディオをやっている人というのはオーディオに関して向上心を持っているからである。
向上心を持っていないなら最初に買ったコンポーネントから良くしようと思わないので壊れない限りは音質的に満足でも不満でも買い替えない。なのでオーディオ趣味を持っている人のほぼ全てがオーディオリスニングに対して多少は向上心を持っているということになる。

向上心を持っている場合、現状のシステムの改善点がないか常に自省し、改善を模索する。なので不満に思っているところがある場合、改善しない限りは改善しなければという心理が繰り返し働くので時間と共により不満に感じるようになる。

つまり一般的な傾向としてはリスニングシステムは使えば使うほど感動は薄れていき、不満な部分は増大していくことになる。

そこで「音質的音響的に良いことを突き詰めて行くと、究極的なものは視覚的に異質で居住性が微妙なものになる傾向」の問題に戻る。
居住性や視覚的な異質さを無視して音質的音響的に良いことを突き詰めていった場合、直後は音質の良さに感動はするものの、使い込んでいくうちにその感動は薄れていくが、居住性の悪さへの不満が強くなっていくことが予想される。
そういうところまで考えていくとやはりリスニングルームは音響的な配慮も重要ではあるが、あまり居住性を犠牲すべきではいうことになる。

究極的な性能を実現するために尖った特徴を持たせるというよりも、欠点が目立たないようにうまく処理しつつ性能も良くするというようなバランス感を重視するものがリスニングルームに関しては理想の方向になっていくのではないかというのが現状で考えているところである。
以前にフリー公開されたら是非読みたいと書いていた
オーディオインシュレータにおける円柱や円錐の振動伝搬特性の解析と実験的考察

がフリー公開されたので読んでみた。
正直和文とはいえ久々の論文だったので、眠い頭ではなかなか入ってこず何日かかけて理解できる範囲で読んでみた。

・円柱と円錐と逆円錐でインシュレーターとしての特性を比較
・円柱インシュレーターは割とシンプルな振動減衰を示す。
・円柱型はトリッキーで、電気でいうところのダイオードのように一方の方向にのみ振動伝播のインピーダンスが高い。円柱の底面から先の方向に振動を伝達しづらくなる。
・ただその片方向の絶縁は交差周波数より低周波のみで発揮されるものであり、それより上の周波数では絶縁性能は十分発揮されない。交差周波数は円錐の角度や素材によって決まる。
・角度によって様々であるが円錐真鍮インシュレーターの交差周波数は2k~8kHzである。私見ではあるが円錐の角度90度のインシュレーターが30度、60度と比較して絶縁性能が良いようである。

床方向にスパイクを刺した場合に期待される効果としては
「低域〜中域の周波数で床が振動している場合に、その振動がオーディオ機器に伝わってしまうことを防ぐ」
という効果が期待できるようである。

裏を返して言えば、
「スパイクを刺す床が強固ではなく共振しやすいのでスピーカーの振動を床に伝えたくない」
「中高域〜高域の音を絶縁したい」
というのであればスパイクは不向きということになる。

またオーディオ機器からスパイクを通して床に振動を伝えるインピーダンスは低いことから、
スピーカーから生じる余分な振動を床に逃がすことで、止めたいときに早く止めることに寄与できる。制動のきいたキレのある音にできると思われる。
床に振動を逃がすとすれば、逃がした先で適切な処理が必要である。スパイクを受ける床は強固でなければならないが、内部損失が小さい素材だと受け止めた床で振動が続いてしまうため、多少絶縁しているとはいえ振動の逆流の懸念がある。内部損失が大きい素材で強固なスピーカーベースとするのが合理的である気がする。
スパイク受けがある場合は挙動がさらにややこしいものとなるが、スパイク受けは床がある程度優れたものであれば、基本的にはスパイク受けに流入した振動をそのまま床に伝えて床で受け止めて貰うものが良いのではないか。
もしくは、床とスピーカーの間にスパイクとスパイク受けが入るという構造は円錐型のインシュレーターと円柱型のインシュレーターの両方を重ねおきしている状態とも解釈することもできる。その場合両方の特性を取り入れているとも解釈できるがどうなのだろうか。

床の中高域の振動をスパイクが絶縁できないことに関しては論文にあるとおり、床の振動する周波数を考えれば低域に偏っているので大きな問題にはならないように思われる。

スピーカーベースの強度に不安がある場合にはスパイクよりも円柱のインシュレーターの方が良さそうである。

ということでよく分からなかったインシュレーターの使いこなし方に関して科学的見解を多少取り入れられることができ、おまじないとか当てずっぽうとか雰囲気でチョイスするという状況から脱出できそうでありがたいことである。

リスニングルームの音質を追求すれば一定程度の広さが必要なことは定説としてほぼ確立している。
大きな床面積があるならある程度有効活用したいと思ってしまうのは人の性である。

多用途に使おうとして、しっかり部屋を区切ってしまうと狭い空間の響きになってしまうので避けなければならない。格子や格子戸などで緩く区切るというのは1つの手にはなると思われる。
以前のルーム案でリスニングポジションの後ろにデスクを置くと捗るという考察をしたが、デスクの後ろに壁があった方がいいのではないかと思っていた。壁があればデスクが不意にずれることも少ないし、ディスプレイが後ろに倒れる心配がないからだ。

また壁構法の場合は土台の上に床の構造用合板を張ることによってプラットフォームフレーム構造が働くため、現在のリスニングルームは床を下げて建築したが、プラットフォームフレーム構造を満たしておらず強度に影響が出る設計になってしまっている。
以前に後方部のみ小上がりにする設計を1度考えたが、むしろスピーカーとリスニングポジションのの三角形だけをピットにして掘り下げて、他はプラットフォームの床高さにするというのでもいいのではないかと思える。

リスニングポジションとスピーカー周囲はできるだけ天井が高い方がいいが、それ以外の部分は天井が高いメリットがそこまででもなく、天井高さが一定で無い方が定在波の癖が出にくいこともあるので、一部だけピットにするのは十分ありなのかもしれない。





シミュレーションでそれを取り入れてみたが、悪くはない感じである。
ただ緩く区切ることもピットにすることも、それをどうしてもやらなければならないという必然性がない。欠点として完成後にレイアウトを変更するという可塑性は確実に低くなる。
悪くはないけど、フラットに区切りなしと明確に優劣が付かない感じでありやや微妙な印象は否定できない。
音楽ストリーミングサービスは以前からあったが、アマゾンやAppleがハイレゾ含めたHD音源のストリーミングを値下げして以来新たな局面になりつつある。

Appleがクラシック音源に強いPrimephonicを買収したと発表。専用のクラシック音楽アプリを公開する予定という。
Primephonicとの統合により作曲者やレパートリー別の優れたブラウズ・検索機能、クラシック音楽のメタデータの詳細表示などが利用可能とのことだ。Primephonicがどのようなものかは良く知らないが、クラシックに特化しているのでそれなりに期待してよさそうだ。

クラシック音源用に現在ローカルネットワークで「作曲者→作品別→指揮者orソリスト→オーケストラ→同一のものがあればアルバム別でブラウズできるようにしているが、いかんせんメタデータの編集が大変で、楽曲を追加するにも手間が一苦労である。
ストリーミングで不満がありがちであったクラシックのブラウジングの最適化に特化したサービスがあればそれは注目に値する物であるし、そういったマニアックなところがに手が届かないイメージがあったAppleがそこを克服してくるとは意外性が高い。
クラシックのマニアックなブラウジングに対応するのだから、そういうものを求めている層にアジャストする意欲があるということなのだろう。そうであればネットワークオーディオプレーヤーに対応するなどの動きがあってもいいのかもしれない。Airplayのように参加しやすいものであれば理想的だ。

その他、Esotericなど一部のネットワークオーディオプレーヤーで対応しているTidalの日本国内でのサービス開始目前ではないかという情報もある。
オーディオ好きにはどれもサービスが本格的に良い物になってきておりどれが良いのか悩みどころではないだろうか。

オーディオファイルに向いていそうなストリーミングサービスだと
・mora qualitas:ハイレゾ込みの高音質ストリーミングサービス。排他モードあり。基本的にはPCからの出力。音質には定評あり。楽曲数は少なめ。料金やや高い。
・amazon music HD:通常プランでハイレゾや可逆圧縮を利用可能になる。デノン、マランツ、Bluesoundなどのネットワークレシーバーが対応するが完成度微妙との情報あり。楽曲数は多め。先述の理由で料金安め。
・Apple music:不可逆圧縮音源のサービスであったがハイレゾや可逆圧縮音源、空間オーディオなども提供開始。クラシックに特化したサービスも提供予定。対応機器が未知数。楽曲数多め。先述の理由で料金安め
・Tidal:ハイレゾがオプションになっているストリーミングサービス。海外でサービス運用中だが、近日日本でサービス開始予定。ネットワークプレーヤーで対応機種複数あり。楽曲数はジャンル次第?日本での価格未定だが若干高め?音質は定評あり。

このあたりで注目するといいのかなという印象