知人のお嬢さん、Fさんに久しぶりに会う。彼女は大学で農業を学び、今は熊本で農業高校の非常勤の教師をしている。農業高校の話は新鮮で、学校の在り方、また学生や不登校になった自分の子どもとの向き合い方からも「教育の在り方」を考えさせられた。

 

近所にある古民家カフェ『蓮月』にて

 


農業高校のこと
Fさんが農業高校で教えているのは「生物活用」他、4教科。生物活用という教科では園芸療法とアニマルセラピーを「農業と心理学」を組み合わせて授業内容を組み立てているとのこと。農業に結びつくのであれば自分の裁量で内容を自由に考えられるので農業高校での仕事はやりがいがあり、面白いという。

Fさんは園芸科だが、人気なのは、畜産学科。学校では牛、豚、馬、犬、鶏、鹿、いのしし、ヤギを飼っているとのこと。牛の出産のときは、夜中の3時であっても寮生たちは呼び出されて、その出産に立ち会うとか。牛は配合飼料や牧草を調節して育て、いかにバランスよく、肉付きがよい牛を育てられるかに取り組むのだが、女子の中には、寮の部屋の壁にジャニーズ系の男の子のポスターとその横に牛のポスターを貼り、その美しさにほれぼれしている学生もいるという。牛の堆肥は田んぼに、稲のもみ殻は赤ちゃんの豚や馬の寝床に使うなど、農業高校内での循環はよく考えられている。野菜や卵など生産したものを売るほか、いい豚や牛を生産したいという目標が明確なせいか、学生のモチベーションは高いとのこと。

学生との関係で学んだのは、一方的に「教える」授業をしていた時は、生徒が授業についてこなかったけれど、一人の人間として対等にありのままの自分を出して学生に向き合い、できるだけ具体的、体験的な授業にすることで、クラスに共感的な雰囲気が生まれ、学習への意欲が高まってきたこと。

 


子どもが不登校に
Fさんには子どもが二人。夫はスリランカ人なので、子どもたちの肌の色は黒い。
上の子どもが小学1年生のとき、そのことでいじめに合い、学校に行けなくなる。「死にたい」という娘に「死にたいくらい辛いんだったら、学校には行かなくていいよ」といったFさん。

ちょうどそのころ開校したフリースクールがあったので、「ママは学校の先生だから、学校には興味があるの。フリースクールに行ってみたいと思う」というと娘もついてきた。

学校との連絡も取り続けたいので、学校内で行われている学童保育の指導員も始めた。そこにも娘はいっしょについてきて、娘は図書館で過ごし学童保育終了と同時に親子でいっしょに帰ってくる生活を続ける。

担任の教師は、それを喜んでくれて「きてくれてありがとう」と言いながら見守ってくれる。4年生になる今は週に2日フリースクール、3日は学校という生活で、全て学校への出席扱いにしてもらっている。

 


学校の在り方を考える
Fさんは、自分の仕事や子どものことを通して教育の在り方や心理学への関心を深め、さらに子どもたちの力になりたいと現在は大学院で心理学を学んでいる。

不登校については、そもそも“みんなと違う”ということでの「いじめ」が原因。学習をカバーするためにフリースクールに通い、家庭ではタブレット学習を行っている。それぞれに費用がかかる。本来、小学校は義務教育、子どもには“学ぶ権利”があるはず。フリースクールの授業料も無償であるべき、とFさんはいう。それから最も大事なことは、“子どもが楽しく通える学校の在り方とは”ということをもっとちゃんと追求するべきだと。
 



農業高校の話から子どもの不登校の問題まで教育をめぐる話は尽きませんでした。
昨今、学校現場の問題は山積しており、大田区においても「いじめ」も「不登校」も減らず、教師のストレスは精神疾患での休職もあるほど。教科書の内容が多く、決められたカリキュラムをこなさなければならない、事務量が多い、さらにクラス経営の難しさなどを聞きます。農業高校での教師の自由裁量が認められる授業、生徒にとっては体験的な学習、これらはこれからの教育の在り方のヒントにならないでしょうか。

不登校については、2017年に完全施行になった教育機会確保法(義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律)において、学校復帰を大前提としていた従来の不登校対策を転換し、学校外での「多様で適切な学習活動」の重要性が指摘されています。不登校はだれにでも起こりうることとして、「休養の必要性」も認めています。
Fさんの子どもが図書室登校やフリースクールと学校の両方に通うことに対して学校が柔軟に対応していることは評価できるとしても、税金ですでに負担している公教育の費用の他にフリースクールの費用負担があること、フリースクールの存在が子どもを救っている現状があるのにフリースクールには公的援助がないことなどは、子どもの「学ぶ権利」の観点からも早急に改善されるべきことです。
まだまだ尽きなかった教育談義、Fさんとのおしゃべりからの報告でした。

 


近所にある古民家カフェ『蓮月』にて

がんは治る病気になってきました。しかしまだまだ「死の病」という印象は強く、ガンサバイバーが増えているのに支援が足りない状況です。仕事は続けられるのか、どういう生活になるのか、不安の中での暗中模索を経験する人が多いのではないでしょうか。モデルの園田マイコさんがガンの告知を受けて「死」を意識して深く落ち込むところから、新たに自分らしく生きてきた過程を聞く機会がありました。ガンになったからこその出会いや発見がある、という明るいメッセージ、 “何によって支えられたか”というお話はガン患者への励ましでもあり、今後のサポート体制の在り方を考えるヒントにもなりました。

主催はikus.医療美容ケア研究会。5月25日、大田区民プラザにて。
マイコさんは176㎝の長身。さすがにモデル、周りを華やいだ雰囲気にしています。

 


 


マイコさんは、高校卒業後からモデルを始め、これまでに『FENDI』『Chloe』『ヒロコ・コシノ』『ジャン・ポール・ノット』など数多くのファッションショーに出演。現在は、『STORY』などのファッション誌、広告、CMなど、幅広い分野で活躍中。現在50歳。

 

園田マイコさん

 

 

ガンの告知と家族の支え
39歳の時にセルフチェックでしこりを見つけ、検査の結果、乳がんだとわかる。悪性との告知に頭の中が真っ白に。医師の声が遠くに聞こえた。一番の心配は当時、中学2年生の息子に伝えるべきかどうか。家に帰る前に夫には伝えておく。すると家に帰ると玄関で息子が待っていて「パパから電話をもらって聞いたよ。パパと2人でママをサポートしていこうって決めたから大丈夫だよ」と言って抱きしめてくれた。涙が止まらないほどうれしく、同時に「この子のために死ねない」と思った。

 


抗がん剤治療
サードオピニオンまで医師を探した。心を託せた医師は、治療方針に納得がいき「だいじょうぶ」と笑顔で応対してくれた医師。抗ガン剤の投与を受ける。副作用は味覚障がい、便秘、白血球の低下と倦怠感。そして脱毛だった。

 

 

脱毛時の写真

 


仕事ができた
髪の毛はすっかり抜けたけれど、先輩からは「スカーフでおしゃれができて、なかなかいいわよ」と言われ、“めったにない経験を楽しもう”と思った。スカーフは古着屋で200円や300円のものも買って楽しんだ。ウィッグがあれば、十分仕事ができたし、仕事をしている間はガンのことを忘れていた。自分の髪が生えだしてからは意外にベリーショートが似合うのかな、と思ったり、カジュアルにもシックにもなれたりする新しい装いの自分を発見して楽しんだ。

 


 

 

支える側になりたい
『STORY』という雑誌でガンのことを公表したのは、家族や先輩のサバイバーに支えられた経験があったから。今度は自分が、今、治療中の人を支えたいと思った。本の出版にもつながる。ピンクリボン運動への参加や乳がんサバイバーのファッションショーも開催。有明がんセンターのロビーで行ったファッションショーには、病院の医師たちも協力してくれて面白かった。

 


MAGGIES東京(豊洲)
イギリス発祥のガン患者をサポートする施設「暮らしの保健室」。常時看護師がいて、無料で相談にのってくれる。建物は木のぬくもりがあって、第2の自宅のようにくつろげる空間。人との出会いがあり楽しく癒される場所、このような施設は大事。ずっと続いて広がっていってほしい。

 


ガンだから人生終わったなんてことはない
そこからどう生きていくかが大切。病気であるけれど病人ではない。
人生は一度きりなので楽しもう。
モデルのイメージとは程遠く落語の勉強をしているというマイコさん。

 


感謝と笑顔
同じ苦しみや不安を持ったことのある人が自分を受けとめてくれた。さまざまな出会いに感謝している。樹木希林さんの名言。「まず人間として自分がどう生きるのか。おごらず、人と比べず、面白がって平気で生きればよい」の言葉に励まされる。
「生きてるだけで、まるもうけ」と「笑う門には福来る」という言葉は本当だなと思う。
笑顔のある人のところには、笑顔のある人が寄ってくるもの。
笑って一日を終わりたい。




 

たった一日のイベントに2千万円より
基礎自治体は、日常の生活を重視すべき

(補正予算への反対討論)

大田区議会・2019年第1回臨時会(5月22日~29日)のご報告・その3
 

 

議会最終日には、全ての議案についての採決が行われます。討論というのは賛成や反対の意見を表明するものですが、目的は賛否の意志を決めていない人に自己の意見に賛同させることにあります。

 

 

写真は2019年3月5日、予算特別委員会のときのもの

 

 

以下、全文です。

大田・生活者ネットワークは2019年度補正予算第1次に反対し、その立場で討論をいたします。
もっとも大きな割合をしめる防災対策基金の創設に50億円の積み立てをすることは、今後、予想される首都直下地震等の備えとして、区民生活の早期の安定のための復旧活動とその予防のために適切に使われるのであれば、必要なことであると考えます。

しかし、毎年気になるのが「空の日イベント」です。漫然と2000万円以上も投入してたった一日だけのお祭りです。楽しいイベントがいけないとはいいませんが、ほぼ1カ月後には大規模な「大田ふれあいフェスタ」があり、地域的にはそう遠くない同じ臨海部です。空の日イベントとしての特化した意義を問わずにはいられません。

 

写真は2016年の空の日のイベント

 


以前も質問したことがありますが、区民へのメリットや国際都市を体感することを目的とするイベントであるならば、その検証がなされているのかがどうかが気になるところです。
大使館ブースが一昨年は39ブースでしたが、昨年は23ブースに減りました。昨年は台風が近づいているという情報があったので、直前にキャンセルしたブースがあったかもしれませんが、はじめから参加を見合わせたところはなかったでしょうか。
一昨年、ある大使館のブースの職員から、「今後、これは何につながっていくのですか」「何をめざしているのですか」と聞かれました。批判をしているというわけではありませんが、少なくとも参加している大使館側には目指すものが共有されていなかったということではないでしょうか。

いろいろな国の文化を知る交流にするというなら「おおたふれあいフェスタ」の多文化共生のスペースでもできるのではないでしょうか。

たとえば、空の日イベントに参加してくれた各国と自治体間の親密な関係を築き、羽田からの運航ルートを紹介したり、日本との歴史的なつながりを紐解いたりして、多くの区民にとって、大田区が世界の玄関口で世界各国と親密な関係を築こうとしている、ということを知れば国際都市を多少は意識できるかもしれませんが、ただお祭りの出店を大使館にお願いするだけでは非常にもったいないと感じます。

 


また昨年は雨の中の開催となりました。風がひどくなかったのでテントを使うことができましたが、ぬかるむ地面を整地するなど、対応に職員の労力はいかばかりかと思います。野外でのイベントのリスクは天候であり、天候が成功を左右するともいえます。リスクの大きいものに税金を投入することには慎重にならなければならないのではないでしょうか。

子どもを持つ家庭などは特に、家族で楽しめるところを探し求めており、イベントをめがけて参加しますが、裏返せば、日頃は大田区にはあまり遊ぶところがなくて、週末には川崎ラゾーナにいくことが多いという声も聞きます。買い物もできるし、無料で子どもが遊べる室内遊技場もあるそうです。

イベントは元気で動ける人は楽しめますが、高齢だったり、障がいがあったりすれば、たった一日のイベントに、しかも遠い場所であれば、参加しにくいということもあります。

大田区は基礎的自治体として、区民の福祉向上のために、区民が地域の中で日常的に安定的な生活を送ることができることにまず目を向け、税金の配分をしてほしいと願います。

この補正予算には、「子どもの長期休暇応援プロジェクト実施に係る経費」など、賛同できる施策も多い中で、反対をするのは躊躇がありましたが、毎年、漫然と行われているイベントへの見なおしの必要性の意味を込めて、あえて反対し、討論といたします。