キャバ嬢ができるまで~歌舞伎町24時の昔話~ -2ページ目

昔話⑩ピエールで働く女の子たち

ピエールは在籍30名くらいのいわゆる中箱と言われるくらいの規模の店だった。

深夜に賑わう店なので10時くらいまでは暇で開店の8時から出勤してるのは週2~3くらい出てる数名のバイトの子。レギュラーで8時出勤なのはさおりちゃんだけだった。
後は10時出勤の愛さん、リカさん、真琴さん、千春さん、真子さん、久美ちゃん、11時出勤の香織さん、雪絵さん、0時出勤の真希さん、私、優、真奈美、拓海&瑠璃(早い時間の店と掛け持ち)、1時出勤の未来(早い時間の店と掛け持ち)、美樹...
他にもいたけど覚えてるのはこの人達。

女の子はいくつかのグループに分かれていた。千春さん&真子さんのお姉さんコンビ。真希さん&愛さん&リカさん&美樹のわいわいグループ(ここは4人とも常に指名上位)。拓海&瑠璃の仲良しコンビ(この2人は早い時間も一緒に別のキャバクラで働いてた)。後は特にグループもなかったように思う。

私は入店が一週間違いで出勤時間が一緒の真奈美とすぐ仲良くなった。3児の母となった真奈美とは今もたまにメールしている。
そして真希さんにはすごく可愛がってもらった。

昔話⑨真夜中のお客様たち

ピエールは夜8:00~朝8:00まで12時間営業してるお店だったけどその12時間ずっと働いてる子はいなくて、大体みんな5時間とか6時間とかだった。

朝の6時なんかにお酒飲んでおねぇちゃんとしゃべってる人がいるなんて想像がつかなかった。
だけど実際に働いてみると満席で閉店の朝8時を迎えることもよくあった。

自分の働いてる店が終わった後に来る他のパブやキャバクラの店長やカラオケチェーン店の経営者、自営業の人、不動産屋、板前さん、カジノやポーカーで働いてる黒服、金融業(サラ金)、お見合いパブの社長と従業員...そんな感じで半分同業者みたいな人達ばかりの客層だった。普通のサラリーマンのお客さんもいたけどごくわずかだった。

あと、女性同伴で来るお客さんが多かった。というよりも他のお店の女の子がお客さんを連れて飲みに来ることが多かったのだ。ピエールの社長は歌舞伎町にキャバクラを10店舗くらい持っていて、朝8時までなのはピエールと隣のジュエルだけで後は2時までや5時までのお店がほとんど。系列店で仕事を終えた女の子が自分のお客さんとアフターでピエールに来る事がよくあった。後から知ったのだが、お客さんを連れて系列店に行くと2000円くらいのバックがあったらしい。

9割近くが指名してる女の子がいる常連客でフリーはそのお客さんが連れてくる枝のお客さんか、たまーに来る新規だけだった。

当然そんな中で指名客を掴むのは大変なのだが入ったばかりの私は最低時給でもパチンコ屋さんの倍以上だし大満足だったので、指名たくさん取って稼ごうなんてまったく考えてなかった。最初は。

昔話⑧真希さん

「男に殴られたの」

真希さんいいの?そんな事お客さんの前で言っちゃっていいの?水商売はお客さんに彼氏いるか聞かれたらいてもいないという鉄板の法則があるんじゃないの??

「すぐ殴るのよ。綺麗な顔が台無し~(笑)」
「そんな男やめた方がいいよ。ねぇ、瑞樹ちゃん」
「え...ハァ」
「真希もう一緒に住むのやめろよ。知り合いの不動産屋に頼んでやるから引っ越せよ」

えっ目あせる彼氏がいるどころか一緒に住んでることまで指名のお客さんに公表してるの??ちょっとびっくり。

帰りに更衣室の所にグラフが貼ってあった。グラフが2回折り返してさらに伸びてる人がいた。

その長いグラフ、ピエールのナンバー1は真希さんだった。

真希さんはC.Cガールズの藤森夕子と歌手の谷村有美を足して2で割ったような細くて綺麗な人だったし、新人の何もわからない私がヘルプで付いても優しく話を振ってくれる人だけど、ピエールには他にも綺麗な人やスタイルのいい人たくさんいたのでナンバー1というのはちょっと意外だった。
でも、その後知れば知るほど真希さん以外にナンバー1はありえないと思わせる人だった。

私はその後10年間水商売の世界に身を置くことになるのだがすべてのノウハウは真希さんから学んだと言っても過言ではない。