君が見たもの | 。

思いのままに。

蚊を叩いたとき
罪悪感って、ある?

俺は、どちらかと言えば
感じる側の人間だ。

もちろん、害があるのは確かだし
仕方のないことだとも思う。

けれど、命を終わらせること
それに慣れてしまうのが、怖い。

謝りもしないし
5秒後には忘れてる。
そんなもんだろうって
思うかもしれないけれど

できるだけ殺さずに済むなら
その方が、いい。

蜘蛛も、蟻も、蚊も。
命に価値がないかもしれない。

それでも、逃がせるなら
逃がしてあげたいと思う。

そっと掬って
「違う場所で生きていってね」と
願うだけだ。


迷い込んだのか
それとも本能だったのか

最後に見たのは
天から降ってきた
白いティッシュだった。

プチュ、という音と共に
俺の命は潰えた。

ただ生きていたかっただけ。
けれど、それは許されない世界だった。

悲しみなんて、ない。
本能にそんな感情はない。

それでも
たったひとつだけ、思うのだ。

君が見たものは、なんだったのか。

害虫駆除の対象として
ただ処理された、俺のことを
ほんの少しでも
考えてくれただろうか。

突然の出来事。
けれど、それもまた
輪廻の流れの中。

せめて、君のためになっただろうか。
その答えは、誰にもわからない。
本能も、何も語らない。

ー諸行無常ー

けれど…


…せめて

俺が君を殺めた5秒間くらいは
罪悪感を背負っても
いいのかもしれない。

と思う心が、筆を取らせた。

君が見たものを、綴るために。