今もむかしも、いちばん好きなプロはと問われるならば猿川プロと答える。今風に言えば推しですね。推しという表現がいつからあるのかはしらない。

いつから猿川推しだったかは、なんか覚えていない。気付いたらファンだった。

よく見ていた頃のモンドではいなかった(途中から出たようたけど、そのへんのシーズンは見てなかった)。当時はハギー全盛であり、大魔神がいつみても勝ってるイメージで、土田は独特且つ唯一の存在感を出していた。王道とは思えない土田が勝つのは爽快であった。一方ではオーソドックスと言えるであろう手筋の荒正義が1番好きだった。

この辺はまたいずれ語りたいものだが、FBKであったりフガフガであったりどい〜んであったり、私の観る雀の源流はその辺りとなる。


猿川について、RTDでは2年目から参戦だったと思うが、その頃には既に気になっていたと思う。となるとどこかの最強戦でなんとなく目にしていたのかもしれない。オーラス倍満フリテンツモのやつであれば、きっかけとして覚えていると思うのだが。

そのRTDでは序盤苦しみつつも逆転の猿川を体現するが如く後半に脅威の連帯率で予選突破した。

翌年のRTD(2018だったかしら)でも同様に、序盤に苦戦していた。初日が出ずにダントツ最下位の中、初トップを取った対局は今でも私の記憶においてベストバウトである。とんでもない振れ幅の逆転につぐ逆転の展開で、最後にドラ1索単騎押し切ってのアガリもぎ取りのとんでもない神回であり、私の猿川推しは不動のものになった。その回の猿川は、ウェットなパーマで、猿川史上3本の指に入るイケメンの猿川だった。リーグダントツ最下位だった猿川はそこから然も当然のようにするすると成績を伸ばし、予選を突破していった。結局RTDリーグはどちらの年も決勝にはコマを進めなかった。勝ちたい対局で、白鳥や勝又、瀬戸熊との巡り合わせが良くなかった記憶がある。


Mリーグが発足した年、RTDメンバーが多く選ばれる中、猿川は選ばれなかった。とても、とても残念であったが、そうなるかもしれないとも思っていた。万人受けしない印象のある選手だ。とは言え当時、モンドでは見ていたが黒沢茅森(あきもだが)などは例えばRTDに入ったら猿比でどれほどの選手なのだと思ったし、当時絶不調だった滝沢が選ばれて猿川が選ばれないのは悔しかった。園田は無名と言われていたが、観る雀勢としては駅伝?とかなのかな、なんかよく目にし始めていて強い選手なんだろうなと特に違和感はなかった。

今年猿川が選ばれるまでの、各年に行われたドラフト指名への期待と残念な気持ちをしたためようと思ったが、期待通りにいかないが故の不満という内容であり、リーグや他の選手の悪口風になってしまうのでやめることとする。

いずれにしても毎年タイトルを獲得する旬な選手も出てくる中で何かの巡り合わせが起きない限り猿川のMリーグ入りはないと諦観を持っていた矢先の今年ビースト発足、猿川の指名であった。要は1ファンとして、今期のMリーグはとても楽しみだということだ。

万人受けしないといったことを前述したが、独特の雰囲気やスタイルなので人気出るのかもしれないという期待もある。期待の裏返しで恐れもある。ずるずると冴えないままいいところを見れない、大介がハマりすぎて猿川が目立たない、堀や勝又に読み切られて封殺される(当然、この逆を期待しているわけだが)、白鳥や魚谷、伊達やるみなどにも負けることもあるだろう。チームが負けすぎて予選敗退、後はべしゃりあたりか。推しがメジャーなリーグに出るというのは怖いものだ。石橋や藤崎、近年の村上等は、なかなか強さを十分に魅せることが出来ずに一線を退いた。当然そのような未来も考えられる。

しかしそうか、それでもよいのか。それでも私は石橋のことが好きだった。喜怒哀楽を持って、勝ったら嬉しかったし負ければ理不尽だと文句を言って応援していた。それでもよいのだ。猿川が、なんだこいつこの強くて面白い選手は誰なんだと世間に広まっていく姿を想像しながらビール片手に応援するのだ。それでよいのだ。

石橋はなかなかコンスタントに勝ち星を積み上がれずなんでこんなに当たり牌ばかり掴むのだろうと本気で思っていたが、パイレーツ優勝シーズンのセミファイナル、石橋がフェニックスとトップラスを決めて爽やかなガッツポーズを見せた試合も、私にとって忘れられない一局である。


シーズン中は自身の少なくない時間をリーグ観戦に費やし、そんな爽快であったり芸術的な試合との出会いを夢想してビールと野次を交えながら観戦する。立派な趣味である。サッカー観戦とも野球観戦とも同じことだ。

なお、普段私が麻雀をする(普段といっても数ヶ月に一度とか)会社同僚や学生時代の友達の中で、Mリーグの話をがっつりするのはせいぜい5人程度である。その中に猿川推し及び石橋推しを共感してくれる人は、まだいない。