　どこでも八景というのがあり、ここ平塚市でも八景が制定されて、碑が建っている。そのほとんどを先日のドライブで廻って、見たことは見た。

1. 湘南平

2. 金目川と観音堂

3. 七国峠・遠藤原

4. 霧降りの滝・松岩寺

5. 森の前鳥神社

6. 八幡山公園

7. 湘南潮来

8. 平塚砂丘の夕映え

　となっていると平塚市のページには書かれている。わたしもお気に入りの場所があり、それに対抗するわけではないが、独自に選んでみた。三か所は重複する。

　まずは、やはり湘南平だろうか。それは標高が160mくらいの丘みたいなものだが、平塚市内のどこからでも見える小山で、ふるさとの山という感じはする。わたしは歩いて二度上ったが、バス通りの万田からのルートは桜の並木があり、満開のときにそこから上がる。大磯の高来神社の裏から上がるハイキングコースでも行ったが、1時間半くらいのものだ。子供でも登れるくらいのもので、犬の散歩にも近所の人は上っている。見晴らしは最高で気持ちがいい。富士山と箱根、大山、太平洋が眼下に見えて、三浦半島、江の島、伊豆半島、大島が天気がいいとすっきりと見えている。

　次に上にある八幡山公園だが、いつも図書館に行くときは近くを自転車で走る。そこは薔薇園がいい。洋館があり、戦災でも焼け残った横浜ゴムの工場にあったものを移設した。その建物には戦災の記録写真など展示してあり、外には空襲の慰霊碑もある。洋館ではたまにコンサートもあって、わたしはよく聴きに入った。

　平塚砂丘というと、そんなものがあるのかと驚くが、昔は東海道線も越えて、いまの市役所辺りまで砂丘があったという。次第に住宅地になり、いまは防砂林とビーチと小さく狭くなったが、それでも砂丘のような広がりはわたしの好きな場所で、冬でもそこにあるベンチに本を読みに行く。お地蔵さんがあり、海で亡くなった子供の弔いだろうか、風車が廻るのがかなしい風景だ。

　平塚駅南口から、松並木のなぎさプロムナードも駅から真っすぐに平塚ビーチまで伸びる広い通りがなんとなく海を予感させるので好きな通りだ。海まで15分くらい。サーフボードを自転車やバイクにつけた若者たちが走ってゆく。その通りには戦前は病院があり、いまは違う病院が向かいに建っているが、かつて高山樗牛が亡くなったという終焉の地の碑がある。その家はそこから少し通りが西に行くと旧居跡という碑が民家前に見える。病院跡には並んで、有島武郎の奥様が亡くなった文学碑もあり、有島は病気療養の妻を見舞って通った。

　文学碑では、そこから横道に入ったところにある村井弦斎の屋敷跡が弦斎公園になっているところが奇妙な雰囲気で、わたしの好きな場所だ。松は平塚にはやたらとあるが、その公園にも松が点在し、その下には石が無造作に配置されているのは、昔の庭石なのだろうか。弦斎はそこの屋敷に文学者たちを招いて、明治のころに出した『食道楽』のベストセラー本にも書かれている料理を披露した。

　あまり地元の人たちも知らない碑があるのが、平塚駅に近い紅谷町にある小さな公園の隅にある番町皿屋敷お菊さんの塚がある。お菊さんは平塚の出で、江戸の青山主膳に奉公に出されたとあるが、どこまで史実なのか。郵便局脇の公園で分かりにくいが、誰か来たら案内したい。

　わたしの好きな場所として、イシックス馬入のお花畑がある。相模川の河川敷が四季折々の花が咲く広々として気持ちがいい場所になっている。孫を何度か連れて行った。虫取りにはいい。ポピーやラベンダー、菜の花、チューリップにパンジーと、写真を撮りに行っている人たちもいるが、あまり混まないで静かなのがいい。

　八景の最後が花菜ガーデンだが、有料になっていて、市の郊外で北西にある広い公園だが、そこでお気に入りは、蓮の咲く池のほとりで、ポプラが背景にあり、そこから見る風景画は、ゴッホの糸杉の絵にも似ているし、モネの睡蓮の絵にも似ている。広大な北海道の風景か、外国の農村風景かと見間違う。園内は他に見どころはいっぱいあり、よく造られた自然植物園だ。うちから自転車でも行けるが、花の咲いている時期がいい。春と秋だろうか。隣接するあさつゆ広場では野菜と果実、花などが買える。

　以上が自分が選んだ平塚八景だが、ここは住みやすいいい町だと、つい長く暮らしてしまいそうだ。これからもいい風景を探して街歩きは続く。

わたし的平塚八景