今日5月9日土曜日のことである。俺は会社から資材の移動を頼まれ、室蘭にある営業所へ向かった。春らしく暖かな陽気で、窓から入ってくる風が気持ちいい。日の当たらない地下でトイレの便器を磨いている仲間たちを思うと、申し訳なさを感じる。ただ、"ドライブ"を楽しむことが出来たのは、昼食の買い物とトイレ休憩で立ち寄ったスーパーまでだった。順を追って出来事を話したい。

 

 会社を出発した俺は国道36号線を走り、一路室蘭へ向かった。北広島市、恵庭市、千歳市、渋滞など皆無の道を快調に進んでいく。ここまでは何ひとつ変わったことはなかった。雲行きが一変したのは、苫小牧市に入ってからだ。すぐには気付かなかったが、ここからはナンバープレートの管轄が変わる。北海道の面積が九州の2倍以上あることを考えると、"他県"に入ったようなものである。

 

 しばらく走り続けていると、札幌ナンバーの俺の車と車間距離を取る車がどうも増えている気がした。また、俺の車を追い抜く際に強い視線を向けていくドライバーが何人かいた。いったい俺が何をしたと言うのか? ただ、札幌ナンバーの車を運転しているだけである。

 

 

 出発してから2時間弱……、俺はトイレへ行きたくなってきたので、昼食の買い物を兼ねてスーパーに車を停めた。駐車場はそれほど混雑していなかったが、ぶつけられるのが嫌なので、いつものように入り口からいちばん離れているスペースに駐車した。まずはトイレ、そして買い物。車へ戻ってきたのは約15分後である。俺はそこで愕然とした。

 

 

 

 ウイルスを恐れる気持ちはよく分かる。俺だって怖い。だが、しても良いこととそうではないことがある。わざわざこんな紙を刷って、札幌ナンバーの車を探していたのだろうか? それこそが不要不急の外出ではないか? 俺はワイパーに挟まれた紙を取り、黙って車に乗り込んだ。周囲を見回してみたが、それらしき人間はいない。同じ北海道民として、いや、同じ人間として、深い悲しみを覚える。ウイルスよりも恐ろしいのは人間だという言葉を実感した。ウイルスは人を思う優しさや思いやりまで冒してしまうのか……。

 

 幸いなことに車が傷つけられているようなことはなかった。だから、警察に被害届を出したりはしない。それを踏まえた上で、俺はこのような歪んだ正義を振りかざしている人たちに問いたい。その行為で誰が救われるのか? 誰を救おうとしているのか? 誰の前でも披露できる行為なのか? 同じ思いをする人がいないように、そして一日も早いウイルスの終息を願う。

 

 

文・写真 清掃氏 絵・ekakie(えかきえ)

 

 

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