ベートーヴェンのボックスセットはいくつか持っていますが、
私の一押しは、ブルーノ・ワルター指揮の全集です。
特に好きなのが、交響曲第7番の第2楽章。
昔から何度も繰り返して聴いてきました。
ワルターの演奏は、決して派手ではありませんが、
どこか人のぬくもりがあって、
急がず、音楽が自然に流れていく感じがあります。
目を瞑り、静粛の中で聴く第2楽章は、
まるで深い呼吸のようにゆっくりと広がり、
ひとつひとつの音が、静かな部屋の空気に
そっと溶け込んでいきます。
華やかさや劇的な表現とは違う、
“音楽そのものの温度”だけが残るような時間。
その穏やかさが、日々のざわめきを少しずつ遠ざけ、
気づけば心の奥に静かな灯りがともっている。
そんな体験を与えてくれるのが、
私にとってのワルターのベートーヴェンです。

