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江戸末期。
越中・岩瀬の北前船が遭難した。
仙台領・東丹湊(釜石市唐丹)を出たところで暴風に吹かれ、太平洋に押し流されたのである。
5か月に及ぶ過酷な漂流。そして、アメリカの捕鯨船に救助された後もハワイ、カムチャッカ、オホーツク、アラスカを転々とし、5年後にようやく択捉へ帰還する。
その長者丸の乗組員の一人が次郎吉という男だった。

彼は、異国にあっても不屈の精神と持ち前の積極性で異人たちに溶け込み、各国の政治・軍事・社会の情報を得た。たとえば、パナマ運河建設の動きまで知るのである。言葉も帰国時に3カ国語1459語を記憶していた。

鎖国下の日本にあって、帰還した漂流民の情報は、さぞかし貴重なものだったろう。しかし、土佐のジョン万次郎らとは違って次郎吉は公儀に重用されることもなく、歴史の闇に消えている。
それは、帰国が明治維新の25年前であり、開国へ向けた動きが乏しかったためかもしれない。

太平洋の荒波と、歴史のはざまに消えた次郎吉を追った拙著『漂民 次郎吉』が、4月下旬にも三一書房から刊行されることになった。

歴史ドキュメンタリー小説の形をとっているが、北前船や越中売薬、薩摩・琉球を介した清との抜け荷(昆布ロード)のほか、19世紀の各国の様子も綿密に描いた。
さらに江戸期の庶民の生き様を通して、現代人が忘れてしまった日本人としての誇りとか、恥の概念、宗教心なども浮き彫りにした。

出版を控え、当ブログでも次郎吉にまつわる話を中心に書庫を立てたので、おいおい書いていきたいと思っている。