「一億総白痴化」と言ったのは評論家、大宅壮一である
天賦の才で時代を鋭く切り取ったのは、よく知られている
その夫人が、昌さん
先月、100歳の長寿を全うして亡くなられた

一度だけ、自宅へお邪魔したことがある
確か24年前ぐらいだったと思う
目的はインタビューである

「娘の映子がね」とか「講談社の野間さんがね」などという言葉がぽんぽんと飛び出す
田舎者の自分には、まぶしい世界である

昌さんは富山で小学校の教師をしていた
その思い出として、体操の時間に手足の振りを左右逆にして見本を見せたという
もちろん、児童のほうを向いているから反対にしたほうが、子供たちは正確に動けるわけだ

そんな昌さんが、講演で富山に来た壮一と出会う
なにしろ、講演会場で聴衆の一人だった昌さんを、その場で見初めたというから驚く

こちらが若かったこともあって、エピソードもろくに調べないで自宅へ伺った
すると、途中で「あなた何も知らないのね。もっと勉強してから来るべきよ」と叱られた

そして、ご著書2冊をいただいた
勉強の足しにしろということだろう
いきなり、硯箱のふたを開けて墨をすり出されたので見ていたら、贈呈本に一筆したためられた
何から何まで、感心することしきりである

インタビュー記事には、「勉強していない」と叱られたことも言葉通りに書いた
「さすが壮一氏の未亡人、怖い、怖い」と自分の言葉も付け加えた

後日、その新聞を送ったら、「まるでロク音のような記事」と評しながら、「写真がとっても素敵に写っていました。そこで、あと2部送ってもらえませんか。大宅文庫に入れたいから」と、はがきが届いた

一人で行ったから、写真も自分で撮った
インタビューが終わってから、納得できるまで何枚も撮った
いやがらずに応じてくれた
故郷の人間を大事にしてくれた傑物である
インタビュー当時で75歳ぐらい
品のある美人だった

いろいろと感謝を込めて、合掌