

一般に開放されておらず、関西電力の工事専用ルートだが、「電気事業の見学会」という形で、抽選による参加が可能だ。
参加者の出発地点は2箇所ある。一つは、宇奈月から黒部峡谷鉄道に乗って1時間20分のところにある終点「欅平」。もう一つは立山黒部アルペンルートの黒部ダム。
欅平からは、黒部峡谷鉄道のトロッコにそのまま乗車しているだけでいい。一般のお客さんが降りるとトロッコは先へ進む。営業路線としては欅平が終点だが、鉄路は先に延びているのだ。
着いたところが、欅平下部駅。なんとも愛想もない名前だが、工事用なのだからそれで十分なのだろう。ここで「竪坑」に乗り換える。竪坑とはエレベーターのこと。荷物用はトロッコの車両を積めるほどの力があり、200mを一気に上がる。
これは黒部川第三発電所建設のために造られたもので昭和16年に完成している。つまり戦前の施設なのだ。当時すでに、60階建て高層ビルのエレベーターに匹敵するものがあったのだ。
あっという間に「欅平上部駅」へ。ここで、初めて外へ出られる。つまり山腹に顔を出すという形である。参加者たちからはいっせいに「ワーッ」と歓声が上がった。日の光を浴びた北アルプスの真っ只中だ。正面には雪をかぶった白馬鑓岳と天狗頭が美しい。一気に秘境へと連れてこられた感じがする。
山の空気を存分に吸った後は駅に戻って、次に1車両10人を収容するバッテリーカーに乗る。蓄電池で動く電車である。全線トンネルの中を走るのだが、このトンネルこそ吉村昭の小説「高熱隧道」で紹介されたところだ。最高時の岩盤温度は165度。仕掛けた発破が熱で爆発して多数の死傷者が出たこともある。
今でこそ、40度ぐらいに冷えてきたが、トンネル内は硫黄の匂いがして、岩盤は湯の花のように白い噴出物で覆われている。バッテリーカーも耐熱仕様となっており、窓の内側にはワイパーがついている。中が曇って、外が見えにくいからだ。(つづく)