
少数民族だと一人っ子政策にかかわらず、通常二人の子供はいる。しかし、都会などでは、一人っ子が当たり前。両親と、おじいちゃん、おばあちゃんの計六人にかわいがられる。同年代の子供と触れ合うことも少なくなり、人とかかわることが苦手な子供たちが増えてきたわけだ。
この政策も二〇年続いて、高齢化に伴う問題が発生し、中国政府は一部で一人っ子政策を緩和したが、このガイドは「それでも、子供は増えないだろう」という。なぜなら、いまの若い人たちは、もう子供をいらないと考えているからだそうだ。自分自身が一人っ子で育ったという経験も基礎になっている。さらに子供にいい教育を施そうとすると、お金がかかる。今は大学を出てもいい仕事に就けるとは限らず、大学院に行くことを希望する人も増えているという。こうした厳しい競争下の社会になってしまったから、子供を複数育てることなど、ごめんだというわけである。
ガイドはこう言う。
「自分も甘やかされて育てられたので、今まで、こうしたことについて考えたことはなかったんですね。しかし、この仕事に就いてから、いろいろと見えてきました。お菓子をあげると田舎の子供は素朴で喜ぶ。都会の子は無視する。都市部は豊かになったが、これでいいのだろうかと思います」
だが、よりよい生活を求めて、いまもなお多くの人々が都会にあこがれて田舎をあとにする。一三億人中、九億人が農民という国である。農民戸籍から都市戸籍に変更することは実に難しい。そこで一時在留という形で出稼ぎに出てくるのだ。誰もが、チャイニーズドリームを追い求めている。
「幸せはいろいろあります。どっちのほうがいいかは、その人次第ね」
ガイドはこう締めくくった。都会の生活が悪いとは言わない。だが、確実に人と人が触れ合うことが難しくなっているのは確かだ。