モデムの故障で新規投稿できず、やや遅れた感があるが、天皇・皇后両陛下の
東南アジア歴訪について、少し触れておきたい。
 シンガポールで陛下は、「先の大戦で貴国においても尊い命を失い、さまざま
な苦難があったことを忘れることはできない」と挨拶された。

 今の若い人たちは歴史に興味が薄く、シンガポールも単なる観光地のひとつと
しか見ていないのかもしれない。しかし、この小さな島は今でこそあふれる緑の
中に近代的なビルが建ち並び、先進的な国づくりで有名だが、かつては昭南島と
呼ばれた。いや、日本がそう名づけたのである。

 太平洋戦争で日本軍はハワイへの奇襲攻撃とともに、マレー半島も占領しつつ
あった。もちろん、石油の確保が狙いである。歩兵や銀輪部隊と呼ばれた自転車
に乗った兵が南下、米英豪軍と熾烈な戦いをし、昭和17年2月15日、シンガポー
ルを占領したのである。
 その模様は山下奉文司令官が英国のパーシバル司令官に無条件降伏を迫り「イ
エスかノーか!」という有名なせりふとともに映像で日本に伝えられた。そして
この島は昭南島と名づけられたのである。抗日分子と目された中国人が虐殺され
るなど悲劇の歴史もあった。

 シンガポール最大の観光地・セントーサ島に「イメージ・オブ・シンガポール」
という博物館があり、日本の侵略の歴史を紹介している。日本人の大半がこうし
た事実を忘れたが、シンガポール人は記録に留めているのだ。

 歴史は繰り返すという。なら、戦争もまた起こるのかもしれない。それは、悲
惨さを語り継ぐことがなくなったときだろう。あれほど、身近な人の死や生活苦、
言論の封殺に懲りたはずが、いつしか忘れ去る。その時が来ないようにするには
どうしたらいいのか。過去を水に流したり、忘れるのが得意な日本人というもの
を考えるとき、本当に難しい問題だと実感するのである。