イメージ 1

イメージ 2

 カウントダウン

 続いて、「七番札所・十楽寺(じゅうらくじ)」である。県道一三九号線を東に向かえば約四キロあまりで着く。下が白で上が朱塗りの中国風鐘楼門が目印だ。なんだか境内もおしゃれな感じで、極楽浄土の一〇の楽しみを得られるようにという名前がなんとなく分かってくるから面白い。

 お参りを終えて鐘楼門を出るとき、こちらに向かってくる自転車の彼と再び会った。まさに滑るように走ってくる。手を挙げて呼び止め、「その自転車、エンジンでも付いているのかい」と冗談を言ったら、ニコッと笑みを返した。
 一キロちょっとで、「六番札所・安楽寺(あんらくじ)」に着く。池には錦鯉が泳ぎ、心休まる風情である。本堂の中に納経所があるので、納経をしないボクとしては、ちょっとお経を読むのもやりにくい。しかし、そんなことは言っておられない。真摯に祈ることが今回の目的だ。恥ずかしいとか、納経もしないで図々しいと思われないだろうかという気持ちでは、人間が狭くなる。堂々とやればいいのである。これも修行である。

 県道一二号線を五キロ余り東に行けば「五番札所・地蔵寺(じぞうじ)」である。広い境内を誇っている。ご本尊は勝軍地蔵菩薩(しょうぐんじぞうぼさつ)という、甲冑をつけ馬に乗った珍しいものだという。地蔵菩薩は本来、釈尊の入滅後、弥勒菩薩が現れるまで仏のないこの世で、衆生の悩みや苦しみを救済する菩薩なのだが、一般的には子供の味方としてのイメージが強い。だから、ちょっと不思議な感じがする。もっとも、こうした姿のために源義経らから、このお寺が篤く信仰されたという。

 境内で、最終目的地の一番札所近くにある民宿「観梅苑」に予約の電話を入れた。通常は食事の準備があるから、昼まで、もしくは午後二時ごろまでに予約電話を入れるのが礼儀であろう。その時間を大幅に上回って三時半になっていた。電話に出たおばあちゃんが「どうぞ、おいでください。お待ちしています」と答えてくれたときは、正直ホッとした。

 さて、ならば行くのみ。「四番札所・大日寺(だいにちじ)」は二キロほど北上した閑静な山の寺である。古びた朱色の山門が出迎えてくれた。なんだか、もうすぐ終わりだとなると寂しくなる。かと言って本日の行程は早めに済まさねばならない。ジレンマを振り切って、また乗車した。

 一キロ余り打ち戻りしてさらに東進すると「三番札所・金泉寺(こんせんじ)」がある。こちらの仁王門は真新しい朱色をしている。続いて「二番札所・極楽寺(ごくらくじ)」は二キロ半ほどの距離。あっという間に到着だ。もう先ほどからいちいち頭陀袋をトランクに入れることなどしていない。肩から提げてそのまま乗っている。お寺に着けばヘルメットを脱いで、手袋、腕カバーを外せばすぐにお参りの態勢に入れる。
 まさに終盤はカウントダウンのごとく、カミカゼ参拝だ。変えなかったのはお経のスピードだけである。(つづく)