イメージ 1

 二人のバイク遍路

 標識に従って行くと、道が二股になり「歩き← 車→」と記されている。これも見覚えがある。前年とは逆に右側の道を進むと、藤井寺の駐車場に着いた。大きな箱を積んだ二五〇ccのアメリカン、ホンダレブルが停まっている。
 そばに駐車したら、レブルのおじさんが「富山から?」と聞いてきた。バイク愛好者はどこでも仲間だ。すぐに打ち解け、おじさんのほうから話し始めた。

「バイクで来ている北海道の女の子と知り合ったんだけど、まだ来ないので待っているんだ。道に迷っているのかなあ。あと一時間待って来なければ、先に行こうと思っているのだけど」
「そうなんですか……。遠いところから来ている人もいるんですね」と、ボクはやや見当違いのことを答えてしまった。ただ、こちらは旅の途中に連れが出来るような余裕もなかったなあと再認識した。

 駐車場の外に土産物店があり、そこのおじさんに「バイクはいくらですか?」と聞いて、駐車場代一〇〇円を渡す。狭い道を歩けば、山門はすぐだ。ここは三十三番・雪蹊寺と同様、臨済宗のお寺である。今は境内も小さいが、かつては七堂伽藍の建ち並ぶ真言宗の大きなお寺だったそうだ。戦国時代に戦火に遭い、江戸期に再興した際、改宗したらしい。
 本堂横から登る焼山寺への遍路道を感慨深く眺めたあと、静かにお参り。ここには一組の夫婦遍路がいるだけだった。

 鴨島町の中心部に出て国道三一八号線で吉野川を渡る。土成町を経て「十番札所・切幡寺(きりはたじ)」への上り口に達した。切幡寺は山の中腹だ。旅館や土産物店が並ぶ狭い通りをフュージョンは駆け上がる。山門が見えてくるが、その左横を通ってまだまだ行く。上り詰めて駐車場がある。
 歩きだと山門から三三三段の石段があり、かなりハードな行程である。境内に着くと若い男性遍路がベンチにいたので、
「歩きですか?」と聞くと、
「バイクです」
 なら、同じやなあと思って、
「私はスクーターですよ。どちらから?」
「大阪です。本当は山形なんだけど、仕事で……。どこから上がってこられたんですか?」
「すぐそこに駐車場があるので」
「えっ、なんだあ。知らなくて石段を上がってきましたよ」
「三三三段あったでしょ。まあ、大変だけど歩くのもいいですよ」と答えておいた。
「スクーターなら、山道はフルスロットルでも大変でしょう」
「いや、大型スクーターだから」
「スクーターと言うから原付かと思いましたよ」
 バイク談義とまではいかないが、少しだけ話はできた。
 重厚な塔があるが、これは全国で唯一の二重方形塔婆だというものだそうだ。(つづく)