
「十四番札所・常楽寺(じょうらくじ)」は、国分寺から一キロも離れていない。ハスの葉が一面に浮いた池が門前にあった。緑が目に鮮やかで心まで洗われる思いがする。仏教で言う極楽浄土とは、こんな美しい世界を言うのだろう。そんな池のそばの空いている場所にフュージョンを停め、しばし、風景に染まってみた。
境内に入ると、本堂の前の地面は岩盤がそのままむき出しになっている。「流水岩の庭園」というそうだが、人工的に整備されたものとは趣が違って、自然の荒々しさを感じさせてくれる造りである。大自然を小さな空間に閉じ込める日本独特の感性が感じられて面白い。
変わっているといえば、八十八カ所で唯一、ご本尊が弥勒菩薩である。仏教に関心のある人なら知っているが、弥勒菩薩は五六億七千万年後に、この世に現れて衆生を救うと言われている菩薩だ。ちょうどそのころには太陽の寿命が尽きて地球も終わりなのだが、不思議な偶然である。ここでしかない言えない真言、「おん まい たれいや そわか」を経本を見ながら三度唱えた。
さらに南下して鮎喰川を渡り、右折して県道二〇八号線に入ってすぐ「十三番札所・大日寺(だいにちじ)」に着く。県道に面しているため、すぐに分かる。周囲にはいくつもの旅館があり、昔から遍路相手の商売が盛んだったのだろう。田んぼ道に少し入ったところに停めて、参拝に向かった。境内は小さいが何か明るい雰囲気がある。冷たいお茶を入れたタンクがあったが、のどはまだ渇いていない。お接待の心に感謝し拝んだだけで、次に向かう。
これらのお寺は、ほとんど人がいなかった。順打ちだと、コース的に朝から回れるところではないのかもしれない。誰とも話が出来なかったのは残念だが、これだけは仕方がない。(つづく)