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 大師が悟りを開いた地

 最御崎寺の駐車場に停めて、ほんの少しだが参道を上ると山門がある。境内にはほとんど人がいなかった。このお寺は、弘法大師が若いころに修行をしていて初めて悟りを開いた地として有名だ。その後、八〇七年に唐から帰朝、嵯峨天皇の勅願で伽藍を建立したという。立派な仁王門の前にその青年弘法大師の像がある。境内も山の中にしては大きく、多宝塔などもある。

 そこからは海が見えないので、ちょっと寄り道して歩いて坂を下ることにした。どうしても突端から海が見たい。下りて行くと、室戸岬灯台があった。柵があって中には入れないが、直径二・六メートルという日本で最大級のレンズを納めた姿を眺めることが出来る。これが夜になると、遠く太平洋の海原に光を発するのかと感慨深い。やや曇っていたため海は灰青色だったが、波はなく遠くがかすんで見えていた。駐車場に戻って、トイレでタオルを水に濡らし、固く絞って再び覆面をした。

 国道に戻って間もなく、緑の山を背景にそびえる白亜の青年大師像が左手に見えてくる。ニューセラミック製の高さ二一メートルもの大きさだという。まるで、山の半分の高さまであるような巨大さだ。
 ここからまた長丁場。次の「二十三番札所・薬王寺(やくおうじ)」は徳島県にある。国道五五号線をひたすら北上するだけで、それもほとんど海を右手に見ながらの単調なルートだ。なのに、全く飽きることがない。車の流れは著しく速い。曇り空のため、焼け付くような日差しからは逃れられている。もちろん、それでも十分暑いのだが……

 鋸の歯のように海に突き出た鋭い巨岩(夫婦岩)の間を通り、「タッタッタッタ」と、エンジンは快調な音を立てている。注目を集めている深層水の施設や、いくつもの漁港を通過した。走って、走って、ようやく長い室戸市を出る。フュージョンは東洋町に入っていた。
 ここで高知県とはお別れだ。ノンストップで来たので、まずは「道の駅・宍喰温泉」で、一服する。館内は冷房が効いていて気持ちがいい。大画面で国会中継を見る。郵政民営化問題の質疑を聞いていると、なにか現実の世界に引き戻された感じだ。

 室戸で見た円柱形の赤いポストを思い出す。昔は平和でのんびりしていた。いつしかグローバルスタンダードだとかいって、競争社会になった。豊かになったはずが、国も地方も財政は苦しい。郵政も改革しなければならないという。
 庶民も、昔は一家の主人だけが外で働いて、それで暮らしが成り立っていた家庭が多かった。いまは共稼ぎしないとやっていけないという。子供の数も減った。ホームレスも増えている。豊かになったというのはまやかしか。不思議な世の中である。(つづく)