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 露天風呂

 神峯寺の参拝の帰りに、駐車場にある自販機でジュースを買っていたら、トレールバイクが二台来た。若者である。
「どこから?」と声を掛けたら、
「千葉です」
「へー、千葉の人多いね」と言ったが、その場でUターンして走り去った。もちろん、彼らは遍路ではない。ツーリングである。なのに、白装束の遍路に声を掛けられて、とまどったのかもしれない。いや、ここまで来たから目的は達したのだろう。駐車場に停めて少し歩けばお寺があって、お参りはしなくても記憶に残ることになるのだが……と思うが、人それぞれである。

 この山道は通り抜け出来ないから、海岸線まで三キロ半ほど打ち戻りだ。もう「ホテルなはり」は近い。早く行こうと気が焦ったが、なにはともあれ安全運転だ。
 前年も泊まっているから勝手は知っている。フロントでチェックインして部屋に入った後、早速、浴衣に着替えて風呂に向かった。時間が早いのか誰もいない。桶を使った形跡もなく乾いている。内風呂は熱気に包まれていてむせ返るようだったから、露天風呂だけ入った。

 垣根で区切られた四角い空間から仰ぎ見る青空、木々の緑の美しさに世の中のことすべてを忘れ、風に吹かれていた。聞こえるのは、セミの鳴き声とお湯のあふれ出てくる音だけ。心まで透明になっていくかのようだった。

 風呂場のロビーには無料のマッサージ機が二台ある。空気で体の各部を圧迫してくれる形式だ。とりあえず、そばに設置してあるコイン式洗濯機に洗濯物を入れて、マッサージ機に座る。全身コースをリモコンで選び、体をもみほぐしてもらう。足を乗せる台を高くして、ふくらはぎも圧迫してもらう。これまた極楽である。ビジネスホテルでこれだけのことが味わえるのだから何も言うことはない。

 遍路ツーリングも終盤に入っている。明日は室戸岬だ。これまでのことを思い出しながら、眠りについた(つづく)