
近くの「道の駅・あぐり窪川」で休憩し、地図を見て検討した結果、「三十六番札所・青龍寺(しょうりゅうじ)」のそばにある「国民宿舎土佐」に泊まることを決め、予約の電話を入れた。支配人とおぼしき男性は、
「はい、泊まれます。夕食はどうしますか」と聞いてきた。
「食べられるなら、ありがたいのですが……」
「大丈夫です。夕食と朝食ついて六八〇〇円です。ただし、お風呂とトイレは部屋にないのですが、いいですか」という。もちろん、風呂に入れて横になって眠れる空間があれば十分だ。
「全くかまいません」と答え、現在地を知らせたら、
「バイクなら一時間で来られますね」と教えてもらった。もう四時を過ぎていた。かき氷を食べて元気をつけてから、
「よっしゃー、行くぜー」と、心の中で気合を入れるとともにフュージョンのエンジンを掛けた。
国道五六号線を一気に下っていき、中土佐町でJR土讃線と並行する。須崎市に入って、海が見え始めた。須崎市中心部では、きょろきょろと標識を探したが、迷わず県道二三号線に入ることが出来た。
さて、ここからが問題だ。ルートは二つある。青龍寺は内陸と並行して延びる半島の突端にあり、その突端部分で再び内陸と橋でつながっている。つまり、半島経由と内陸経由のどちらからでも行けるわけだ。両方とも海沿いの道である。去年は歩いていたため、「半島の道はアップダウンがきついから」と人に勧められて内陸部を行ったが、フュージョンならアップダウンは関係ない。そこで、半島の道を選んだ。
これは正解だった。確かに上り下りはあるが、景色が実に素晴らしい。半島の背骨に当たる尾根の部分に県道四七号線が走っており、ときおり、海が見渡せる。それも右は黒潮流れる太平洋、左手には箱庭のように静かな内海・浦ノ内湾。男性的な風景と女性的な風景が一度に眺めることができる。こんなところもまれだろう。
「来てよかった……」。心底、そう思った。
国民宿舎に泊まるのは久しぶりだ。少なくとも一〇年以上、縁がなかった。フロントで名乗ると、先ほどの支配人なのか「ずいぶんと早かったですね……」と言われてしまった。コインランドリーの場所を確認してから、キーを受け取って部屋に入った。
部屋は海に面した和室。とはいえ、標高一〇〇メートルぐらいのところだから、はるか眼下に太平洋が見える。座ってお茶を入れ、テーブルに置かれた案内を見ると、「自分で布団を敷いてください」と書いてある。
まずは汗で汚れたヘルメットの中を固く絞ったタオルで拭いてから、風呂に行く。浴衣のままフロントの横を通って外へ。階段を下りると、小さいながら露天風呂があった。
もちろん、言葉にはできないくらい雄大な太平洋が眺められ絶景である。お湯に入ったり出たりしながら、そんなダイナミックな風景を楽しんでいた。温まった体を風にさらしているのも実に気持ちがいい。あとから失敗したと思うのは、星空になってからまた入るのを忘れたことである。
食事はレストラン。二段になった細長い箱膳が出てきた。生ビール一杯と決めていたが、二杯飲んでしまった。それだけうまかったのである。
本日は、愛媛県から高知の中心部近くまであっという間に来た。さすがに、やや疲れた。(つづく)