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 文筆達成にご利益
 目が覚めると、まあまあの天気である。しかし、暑い。昨夜もエアコンをつけると寒く、切ると暑いので寝苦しかった。朝風呂に行くと体力を消耗してしまうかと思い、午前七時にレストランで朝ご飯を食べ終わると、早々に荷物をまとめた。

 フロントのおばちゃんは昨日とは違う人だったが、支払いをした際に、「お釣り、一〇円玉があるとうれしいな……」と遠慮がちに聞いたら、
「いくらいりますか? 五〇〇円分渡しましょうか」と、プラスチックの封がされ棒状になったままの一〇円玉をもらった。ありがたい。これで二五カ寺は賽銭に困らない。いや、それまでに途中でご飯を食べたり、自販機で飲み物を買ったりするから、また一〇円玉は増えるだろう。当分は大丈夫だ。

 午前七時半。自転車置き場に停めておいたフュージョンに荷物をくくりつける。バックレストにスポーツバッグの持ち手を引っ掛け、ゴムひもで一回縛るだけだ。このゴムひもは、何かの景品でもらった自転車用のものだ。ひどく安直だが、全くずれることなく困らない。
 昨日のうちに西林寺は打ち終えたので、そこを通過して「四十七番札所・八坂寺(やさかじ)」が最初のお寺となる。県道四〇号線を松山自動車道の下をくぐって、さらに県道一九四号線を行けば間もなく到着する。八キロ余りの道のりだ。

 八坂寺は石段の両側に、赤地に白抜きの文字で「南無大師遍照金剛」とかかれた幟(のぼり)がひしめいてにぎやかだ。本堂の地下に下りることができ、中にはびっしりと小さな阿弥陀仏が置いてあった。それぞれ奉納した人の県別になっている。これだけ数があると壮観である。

 次の「四十六番札所・浄瑠璃寺(じょうるりじ)」へは、一キロもない。美しい名前のお寺である。説法石という平たい大きな石が地面に置いてあった。説明書きによると、お釈迦様が説法し、修行されたインドの霊鷲山(りょうじゅせん)の石が埋め込んであるという。確かに真ん中に少し青い色をした三角の石がある。
 仏足石(ぶっそくせき)や仏手石(ぶっしゅせき)などもあり、健脚だけでなく文筆達成にもご利益があるという。ちょっとだけ触ってみた。
 年ごろの娘さんを連れた夫婦が車で来ている。「おはようございます」と声を掛けたら、「おはようございます」とだけ返ってきた。こうした親子の組み合わせはあまりないから、いったい、何を目的にした遍路なのだろうと思ってしまう。(つづく)