一日遅れの「うな丼」
ここまでは次々とお寺があったが、「五十三番札所・円明寺(えんみょうじ)」は、約三五キロの道のりだ。国道一九六号線をひたすら西に向かう。雨がパラパラと落ちてきた。大西町を過ぎ、瓦製造で有名な菊間町に入って間もなく右手に海が見えた。鉛色の空だけに海も青と灰色を混ぜたような色をしている。それでもなお、ぽっかりと島々が浮かんだ瀬戸内の風景は優しく、美しい。
北条市に入った途端、松山市の標識が出ている。ここもついに合併したのかと半分寂しい思いがする。北条市は学生時代に木賃宿に泊まったことがあって、特別に覚えている町だ。目と鼻の先にある端正な形の鹿島にわたり、海岸に生える松の枝ぶりなど、その日本的な風景を存分に楽しんだ。感受性豊かな青年時代のことである。そんな思い出があるだけに、市の名前が消えていくことに寂しさを感じるのである。
おなかもすいたし、「道の駅・風和里(ふわり)」で昼食休憩を取ることにした。雨はずっとぱらついている。レストランに入って、一日遅れのうな丼を食べた。支払いのとき女性店員に、
「合併したの?」と聞いてみた。
「はい、今年から。一月から」ということであった。
雨がだんだん激しくなる。ディスカウントストアで買った黄色の雨具の上着を初めて着てみる。安物だが、なかなかさまになっている。黄色は派手かと思ったが、視認性が高くて事故防止になるし、フュージョンの黒のボディーと四国の風景に似合っているのだ。途中で雨がさらに激しくなり、雨具のズボンも身に着ける。これで完全防備だ。
ガソリンメーターは先ほどから赤を指している。いつものことで、まだまだ走れるのだが給油に立ち寄った。案の定、一二リットルタンクなのに、七・六リットルしか入らない。ここで円明寺への道を確認する。一人の若い店員が分からず、もう一人のおじさんが出てきて説明してくれた。
「そうやな、あと二キロぐらいか。信号にして九つ目」
こちらも地図を出して説明を聞く。
「この地図では、ガソリンスタンドのとこで曲がるようになっているが、今は閉めていてやっていないからな」と丁寧に教えてもらった。
それからは信号の数を数えながら行くが、とっくに二キロは過ぎていた。おかしいなあと思いながらも、なんとかたどり着いた。メーターを見ると六・五キロもあったのである。人の感覚というものは案外当てにならない。しかし、信号の数はだいたい合っていたから、あながち間違いではない。
雨の中のツーリング。それもまた楽しい。ふだんは雨の日はバイクなど乗らないくせに、乗ると実に楽しいのである。(つづく)
ここまでは次々とお寺があったが、「五十三番札所・円明寺(えんみょうじ)」は、約三五キロの道のりだ。国道一九六号線をひたすら西に向かう。雨がパラパラと落ちてきた。大西町を過ぎ、瓦製造で有名な菊間町に入って間もなく右手に海が見えた。鉛色の空だけに海も青と灰色を混ぜたような色をしている。それでもなお、ぽっかりと島々が浮かんだ瀬戸内の風景は優しく、美しい。
北条市に入った途端、松山市の標識が出ている。ここもついに合併したのかと半分寂しい思いがする。北条市は学生時代に木賃宿に泊まったことがあって、特別に覚えている町だ。目と鼻の先にある端正な形の鹿島にわたり、海岸に生える松の枝ぶりなど、その日本的な風景を存分に楽しんだ。感受性豊かな青年時代のことである。そんな思い出があるだけに、市の名前が消えていくことに寂しさを感じるのである。
おなかもすいたし、「道の駅・風和里(ふわり)」で昼食休憩を取ることにした。雨はずっとぱらついている。レストランに入って、一日遅れのうな丼を食べた。支払いのとき女性店員に、
「合併したの?」と聞いてみた。
「はい、今年から。一月から」ということであった。
雨がだんだん激しくなる。ディスカウントストアで買った黄色の雨具の上着を初めて着てみる。安物だが、なかなかさまになっている。黄色は派手かと思ったが、視認性が高くて事故防止になるし、フュージョンの黒のボディーと四国の風景に似合っているのだ。途中で雨がさらに激しくなり、雨具のズボンも身に着ける。これで完全防備だ。
ガソリンメーターは先ほどから赤を指している。いつものことで、まだまだ走れるのだが給油に立ち寄った。案の定、一二リットルタンクなのに、七・六リットルしか入らない。ここで円明寺への道を確認する。一人の若い店員が分からず、もう一人のおじさんが出てきて説明してくれた。
「そうやな、あと二キロぐらいか。信号にして九つ目」
こちらも地図を出して説明を聞く。
「この地図では、ガソリンスタンドのとこで曲がるようになっているが、今は閉めていてやっていないからな」と丁寧に教えてもらった。
それからは信号の数を数えながら行くが、とっくに二キロは過ぎていた。おかしいなあと思いながらも、なんとかたどり着いた。メーターを見ると六・五キロもあったのである。人の感覚というものは案外当てにならない。しかし、信号の数はだいたい合っていたから、あながち間違いではない。
雨の中のツーリング。それもまた楽しい。ふだんは雨の日はバイクなど乗らないくせに、乗ると実に楽しいのである。(つづく)