林道管理所
 次は「六十番札所・横峰寺(よこみねじ)」である。標高七四五メートル。まさに石鎚山への中腹にある山の寺だ。冬場だと道路が凍結する日もあるというから、難所のひとつである。

 香園寺からは歩きだと山道を直登するルートがあるが、ここは車道を行くので、いったん六十三番の吉祥寺辺りまで戻って、県道一四二号線経由で行く。松山自動車道の高架下をくぐり、八キロほど先の瀬戸内バス横峰寺乗り換え所までは、まあまあの道である。
 乗り換え所とは、遠方から来る大型バスがこれ以上進めず、地元運輸会社のマイクロバスに乗り換えなくてはならないことを意味している。団体遍路は全員ここで乗り換えて行くことになる。最初はやや下りもあるが、あとはもちろん上りである。フュージョンは快調に駆け上がる。二五〇ccと言えば、缶コーヒー程度のピストンだが、小さなエンジンでどんどん高度を稼いでいく。

 途中に、木造小屋の林道管理所があって三五〇円を払う。普通車だと一八〇〇円、マイクロバスは三六〇〇円である。領収証には「片道六キロ、往復一二キロの道路施設、駐車場、水洗トイレ、お寺への歩道などの維持管理費に充当しています」などと書かれている。
 前年のことを思い出す。首輪のない犬に導かれて、この料金所までたどりついた。茶色の小さな犬で、ボクの先をさっさと行くのだ。カーブ地点ではボクが追いつくまで待っていて、姿を確認したら、また先に行く。後ろを振り返り振り返り、上り坂を軽快に歩いていた。まさに先導してくれたのだ。その道案内犬のことを思い出して、管理人のおじさんに、こう言った。
「去年も今ごろ来たのですが、犬がいましたよね。ゴンって名前をここで教えてもらいました」。すると、おじさんは、
「そういう犬はいるよ。だけど、そんときは誰が担当していたのかね……。ここは三人で回しているからなあ」とのことだった。

 そこからの道はなお急坂となった。とはいえ、道幅は広くヘアピンカーブの連続でもそれほど厳しくはない。高かった向かいの山がどんどん水平に見え出し、いつしか下に見えるまでになった。
 山のお寺にしては立派な駐車場がある。数十台は停められるようにアスファルト舗装され、白線が引いてある。全く日陰がなくてシートが熱くなることが予想されたが、これは仕方がない。石段をちょっと下りてから、横峰寺への参道を歩くことになる。
 五〇〇メートルぐらい行くと、急に視界が開けて伽藍が見える。冬場は四国といえども雪が積もり、凍結するほどの山中である。それだけに緑に囲まれた境内は荘厳な雰囲気が漂っていた。(つづく)