鉄筋のお寺
 新居浜市を越え、西条市に入ってようやく「六十四番札所・前神寺(まえがみじ)」がある。三角寺からほぼ四五キロだ。室戸などは途中にお寺がなくて長距離を走ることになるが、意外とこんなところも遠いのである。
 国道には、お寺の入り口を示す標識が出ている。これにしたがって行けばちゃんと到着する。このお寺は西日本最高峰の石鎚山(一九八二メートル)を守る古刹である。確かに険しい山容が間近に迫っている。本堂の屋根が青いのは、銅版ぶきだそうで緑青の色だ。

 大師堂をお参りして、ちょうどローソクがなくなった。前年の余りを使っていたが、ここで終了。納経所に行って、
「ローソク、ありませんか」と声を掛けた。
「そこにあるのが見本です」と、おじさんが言う。トランプの箱を二まわりほど大きくした箱で、価格は一五〇円だという。あまりの安さに感動して、納経もしていないのに、記念に納札を買った。こちらは一束二〇〇枚で一〇〇円だ。

 ここからは、町の中に立て続けにお寺がある。三キロあまり先には八十八カ所で唯一、毘沙門天を本尊とする「六十三番札所・吉祥寺(きちじょうじ)」、一・五キロ先には「六十二番札所・宝寿寺(ほうじゅじ)」、さらに一・三キロ先には「六十一番札所・香園寺(こうおんじ)」という具合である。
 吉祥寺と宝寿寺は町の中の小さな親しみやすいお寺という印象だが、香園寺は境内も広く八十八カ所中、唯一の鉄筋コンクリートで出来た大きなお寺だ。昭和五一年にこの大聖堂を建てたという。二階に本堂と大師堂がある。駐車場にあるテレビでお寺の概要を放映しており、なかなか近代的だ。

 さっきから走っては停まり、ヘルメットや手袋を脱ぎ、経本や数珠、ローソク、線香の入った頭陀袋をトランクから出して……を繰り返している。
 一つの寺では本堂と大師堂の二カ所でローソクを立て、線香に火をつけてから般若心経を上げるため、最短でも一〇―一五分はかかる。休憩や寺の散策などをしていると優に三〇分はかかってしまうことになる。しかし、何度も言うがラリーではない。急ぐ必要などないのだ。
 それにしても、次々とお寺が現れると、歩きと違って確かにあわただしい。距離感が全然違うのである。(つづく)