いよいよ伊予へ
駐車場への道は下りなので、歩いていても少しは楽だ。再び、日焼け防止の完全装備をしてエンジンを掛ける。スロットルを絞ってエンジンブレーキを掛けながら下りていくが、ここがスクーターの悲しさ。カーブ地点ではスピードが落ちるから、クラッチが切れてしまう。
そのたびに瞬間的にスロットルを開けてクラッチをつなぎ、すぐに戻すという操作を繰り返すことなる。路面には砂利もあるから慎重に行かないとならない。ずいぶんと気を遣った。
トンネルのところまで来て、ようやくホッとする。ぐんぐんと高度を下げていくのが分かる。ついに国道一九二号線に出た。この辺りは徳島県だ。いや、雲辺寺も徳島県なのだが、遍路の札所としては讃岐(香川県)の扱いがされている。
すぐに境目トンネルという長いトンネルに入るが、真ん中辺りで愛媛県となる。今回の遍路ツーリングは逆打ちのため、讃岐(香川)―伊予(愛媛)―土佐(高知)―阿波(徳島)と回るコースになっているが、いよいよ二番目の伊予に入ったわけだ。
山間地を走る国道一九二号線は二車線で、なかなか気持ちのいい走りが出来る。適度なカーブがあって、乗っていても楽しい。
だんだん、平地に下りてくるが、典彦さんの話によると、次の「六十五番札所・三角寺(さんかくじ)」へは、下まで下りないで、途中から番外霊場・椿堂の横を通って行けばいいとのことである。
もっとも、このルートは三角寺手前で工事をしており通り抜けは出来ないが、「工事現場は寺のすぐ近くなので、ぎりぎりまで行ってそこに車を置いて歩いて行ける」とのアドバイスをもらっていた。その通りに進んで行くと、確かに工事をしている。
「もっと手前に停めてよ~」と、工事をしている人から注意はされたが、歩いて通過するとすぐに三角寺であった。
ここはまず石段が七三段ある。上に行くと山門が鐘楼を兼ねていて、通過するときに鐘を撞くようになっている。一番奥に本堂、その手前の大師堂をお参りして、屋根付きの休憩所に行った。ここも静岡の金原さんと偶然会ったところだ。
先に来て休憩しているのをボクが見つけた。もう二度と会うことがないと思っていただけに、お互いにひどく驚いた。台風を避けて今治の駅や健康ランドに四日間、宿泊していたそうだ。おかげで、足の遅いボクが追いついたのである。少しだけ腰を下ろして、そんなことを思い出していた。
暑い日である。参拝を終わると石段の下にあった自販機でジュースを買って飲み干す。しばらくはお寺がなくて走るだけになるので、風を切って涼しいだろうと自らを励まして再び乗車した、
ここからは国道一一号線をひたすら走ることになる。立派な国道だから、フュージョンも快調に走る。本来はこういう走りに向いているのだろう。なにしろスクーターだ。
沿線は、ずっと四国中央市だが、旧町名では川之江、伊予三島、土居町と走り抜けていくことになる。単調な道だが、ところどころ、「あー、商店の前にあるのは休憩させてもらったベンチだな」「あのコンビニに入った」「かき氷を食べた二階建ての喫茶店だ」と、ふつふつと前年を思い出す。すべては分からなくても、ところどころ鮮やかによみがえる人間の記憶というのは、こうも面白いものなのか……と感動しながらの走行だ。
同時に、こんな長い距離を前年は歩いたのかと思うと、何か信じられない思いがする。いったい、何を考えて歩いていたのだろう。それも国道脇を白装束に菅笠、金剛杖を突いての旅だ。自分で自分に感心するというのか、まあ、変なおじさんである。(つづく)
駐車場への道は下りなので、歩いていても少しは楽だ。再び、日焼け防止の完全装備をしてエンジンを掛ける。スロットルを絞ってエンジンブレーキを掛けながら下りていくが、ここがスクーターの悲しさ。カーブ地点ではスピードが落ちるから、クラッチが切れてしまう。
そのたびに瞬間的にスロットルを開けてクラッチをつなぎ、すぐに戻すという操作を繰り返すことなる。路面には砂利もあるから慎重に行かないとならない。ずいぶんと気を遣った。
トンネルのところまで来て、ようやくホッとする。ぐんぐんと高度を下げていくのが分かる。ついに国道一九二号線に出た。この辺りは徳島県だ。いや、雲辺寺も徳島県なのだが、遍路の札所としては讃岐(香川県)の扱いがされている。
すぐに境目トンネルという長いトンネルに入るが、真ん中辺りで愛媛県となる。今回の遍路ツーリングは逆打ちのため、讃岐(香川)―伊予(愛媛)―土佐(高知)―阿波(徳島)と回るコースになっているが、いよいよ二番目の伊予に入ったわけだ。
山間地を走る国道一九二号線は二車線で、なかなか気持ちのいい走りが出来る。適度なカーブがあって、乗っていても楽しい。
だんだん、平地に下りてくるが、典彦さんの話によると、次の「六十五番札所・三角寺(さんかくじ)」へは、下まで下りないで、途中から番外霊場・椿堂の横を通って行けばいいとのことである。
もっとも、このルートは三角寺手前で工事をしており通り抜けは出来ないが、「工事現場は寺のすぐ近くなので、ぎりぎりまで行ってそこに車を置いて歩いて行ける」とのアドバイスをもらっていた。その通りに進んで行くと、確かに工事をしている。
「もっと手前に停めてよ~」と、工事をしている人から注意はされたが、歩いて通過するとすぐに三角寺であった。
ここはまず石段が七三段ある。上に行くと山門が鐘楼を兼ねていて、通過するときに鐘を撞くようになっている。一番奥に本堂、その手前の大師堂をお参りして、屋根付きの休憩所に行った。ここも静岡の金原さんと偶然会ったところだ。
先に来て休憩しているのをボクが見つけた。もう二度と会うことがないと思っていただけに、お互いにひどく驚いた。台風を避けて今治の駅や健康ランドに四日間、宿泊していたそうだ。おかげで、足の遅いボクが追いついたのである。少しだけ腰を下ろして、そんなことを思い出していた。
暑い日である。参拝を終わると石段の下にあった自販機でジュースを買って飲み干す。しばらくはお寺がなくて走るだけになるので、風を切って涼しいだろうと自らを励まして再び乗車した、
ここからは国道一一号線をひたすら走ることになる。立派な国道だから、フュージョンも快調に走る。本来はこういう走りに向いているのだろう。なにしろスクーターだ。
沿線は、ずっと四国中央市だが、旧町名では川之江、伊予三島、土居町と走り抜けていくことになる。単調な道だが、ところどころ、「あー、商店の前にあるのは休憩させてもらったベンチだな」「あのコンビニに入った」「かき氷を食べた二階建ての喫茶店だ」と、ふつふつと前年を思い出す。すべては分からなくても、ところどころ鮮やかによみがえる人間の記憶というのは、こうも面白いものなのか……と感動しながらの走行だ。
同時に、こんな長い距離を前年は歩いたのかと思うと、何か信じられない思いがする。いったい、何を考えて歩いていたのだろう。それも国道脇を白装束に菅笠、金剛杖を突いての旅だ。自分で自分に感心するというのか、まあ、変なおじさんである。(つづく)