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 境内に二つの寺
 国道一一号線を一〇キロあまり南進すると「七十番札所・本山寺(もとやまじ)」に着く。周囲に高い建物がなく、五重塔が遠くから見えて迷わずに行ける。
 門前の駐車場に停めて、お参りを終わって出てくると、ヒゲを生やしたシャツ姿のおじさんがフュージョンをしげしげと見ている。ボクがそばに行くまで離れないので、スクーターに興味があるのかと思っていたら、ナンバーを見て、
「遠くから来たんだね」という。
「おととい、富山を朝の六時半に出て、午後四時半に鳴門に入ったんです。これではスピードは出ないし……」
「いや、こういうのはゆっくり走るから、なお気持ちがいいやろ」
「そうですね……」

 こうした会話が出来るのもフュージョンのおかげである。さらに、「人に会ったら道を聞く」という鉄則に基づいて、
「逆打ちしていて、次は観音寺(かんおんじ)さんなんですが、今来た道を少し戻ったほうがいいですか?」と指差した。すると、おじさんは、
「こっちから行けるよ」と、反対側の方向を指し示す。
「今、車が出てきたやろ。あのカーブの先に、もう一つ民家があって納屋があるから、もう少し行くと左に曲がるんだ。踏切があるから越えていくと橋がある。それを渡ると観音寺へ行く道に出る。川の流れに沿って下(しも)のほうへ行くんだよ」

 とても親切な人である。何度も頭のなかで言われたポイントを繰り返して、橋までたどりついた。ところが、川の流れがどちらに向かっているのか分からない。目を凝らしてみるが、コイが何かをくわえて泳いでいるのは見えるが、流れが分からない。勘で一〇数メートル行ってみたが、どうもおかしい。ようやく磁石を取り出して、方向が分かった。もちろん、Uターンである。

 すぐに見覚えのあるところに出た。「六十九番札所・観音寺」、そして「六十八番札所・神恵院(じんねいん)」だ。というのは、二つのお寺は同じ境内にある。立て続けにそれぞれの本堂、大師堂と四つをお参りできる。
 神恵院は本堂が鉄筋コンクリートの覆いが付いているために、ボクの下手な読経もエコーがかかってうまく聞こえるから楽しい。二つのお寺をあっという間に打ち終えた。(つづく)