
八栗寺は、瀬戸内海に突き出た五剣山の中腹にある。標高は二一〇メートル。その五剣山が見えているから簡単に行けると思ったが、ここでも道に迷った。途中で「裏参道」と書いた看板があったが、通過した。「確か、八栗ケーブルというケーブルカーがあり、それに沿った道があるはずだ」。そんな先入観で行ったのが大きな間違いだった。
ケーブルの入り口「八栗登山口」に着いて、わきにある狭い道を上って行くと、途中で通行止めである。実は歩きの人だけが通れるのであった。狭い上り坂だったので、ロングボディーのフュージョンを苦労してUターンさせた。
道を探そうとして高台の住宅街に迷い込み、いろんなルートを試してみたが、ダメだ。高校生らしい若い女性を見つけ、
「すみません。ここから八栗寺さんへ行けますか?」と尋ねた。
「多分、行けると思います」との返事である。
「多分か~」と言ってニコッとしてみせたら、向こうもこぼれるような笑顔を見せた。
こちらは遍路の白装束のままフュージョンに乗っている。日差しが強くて鼻が日焼けするから、白いタオルで覆面もしている。まるで怪しいおじさんか、月光仮面である。これでは道を聞かれたほうも、ドキッとするだろう。
はっと気がついたのが先ほどの「裏参道」である。車道はこれしかないのでは……と思ったのだ。国道近くまでいったん戻って、バス待ちのおばあちゃんに聞いたりして、ようやく裏参道という名の県道一四五号線に入ることができた。こちらも急勾配である。なにしろ、標識には二三%と書いてある。
フュージョンは息を切らせ、というのはオーバーだが、「トットコ、トットコ」と上った。境内のすぐわきまで来て、道は終わり。駐車場というより路肩に停めて参拝に向かう。表参道から入ったのではないから、最初に大師堂がある。その先が本堂だ。背景に岩肌をむき出しにした五剣山がそびえており、圧倒される思いがする。
納経所の隣には、頭が象で体が人間という歓喜天をまつった聖天堂があるのが珍しい。本堂、大師堂以外のこうした伽藍は拝んだだけでお経は省略だ。(つづく)