テロ警戒中
金沢市街地を通過するときは並行する国道8号線が見える。通勤の車でラッシュの真っ盛りだ。会社を辞めて一年以上たつのに、なぜかこうした通勤風景を見ると懐かしく思う。「解脱(げだつ)はなかなか出来ないな」などと、心の中でつぶやいた。少し暑くなってきたが、安全のため白のジャケットは脱がない。
七時五〇分には早くも石川県の「徳光ハイウエーオアシス」に到着。ここは海水浴場が目の前で、駐車場から歩いて行って、ひと泳ぎもできる。もちろん、そんなことはしないが、まずは最初の休憩だ。何も慌てる旅じゃない。
駐車場には、まだ富山ナンバーの車が多い。観光バスが一台止まって、中から夏休み中の子供たちが大勢降りてきた。別のワゴン車からも子供たちが出てくる。
「危ない!どこ見てんのよ」と、車が接近しているのを見ないで走り出した子供を叱る母親の大声。どこにでもある風景だ。いつも一人旅のボクは、家族連れの旅行をしている人たちが少しうらやましく、じっと眺めていた。
ハイウエーオアシスを出ると、香川ナンバーの大型トラックに追い越された。「ボクがこれから向かう四国のトラックか……」。何とも言いようのない思いがギューッと胸を締め付けた。
福井県の「南条サービスエリア」でも休憩。すると、おじさんが話しかけてきた。
「すみません、この先の今庄にパーキングエリアはなかったですかね?」
「うーん」。聞いたことがないのである。念のため、縛り付けたバッグの中から地図を取り出して確認しながら、「今庄はインターしかありませんよ」と答えた。すると、「そうですか……」と困ったような顔をしている。連れと待ち合わせの場所として今庄を指定したのだろうか。こればかりはどうしようもない。
北陸自動車道は福井県の敦賀インターで下りた。名神高速を走るほうが近いのだろうが、若狭方面は三方五湖しか行ったことがないので、そちらを通ってみたかったからだ。高速料金は三七五〇円だった。二輪車は普通車の八割程度というが、それでも高い。日本経済の阻害要因であることはみんなが感じていることだろう。
この先は高速道路が完成していないので、五五キロほどは一般道を走ることになる。美浜町のあたりでは道路沿いに「テロ警戒中」の看板がある。原発銀座だけに、そうしたものもあるのかと思っていたら、あとで四国の道路沿いにもいくつも見かけた。とにかく嫌な世の中になったものだ。
確かに、アメリカの同時多発テロの記憶が覚めないうちに、ロンドンでの同時爆弾テロである。世の中は危険な香りに包まれている。日本も人ごとではない。「高度経済成長から成熟社会へ」……というが、うそである。成熟なんかしていない。混沌としたカオスの社会になりつつある。人類はどうしてこうまで愚かなのだろうか。(つづく)
金沢市街地を通過するときは並行する国道8号線が見える。通勤の車でラッシュの真っ盛りだ。会社を辞めて一年以上たつのに、なぜかこうした通勤風景を見ると懐かしく思う。「解脱(げだつ)はなかなか出来ないな」などと、心の中でつぶやいた。少し暑くなってきたが、安全のため白のジャケットは脱がない。
七時五〇分には早くも石川県の「徳光ハイウエーオアシス」に到着。ここは海水浴場が目の前で、駐車場から歩いて行って、ひと泳ぎもできる。もちろん、そんなことはしないが、まずは最初の休憩だ。何も慌てる旅じゃない。
駐車場には、まだ富山ナンバーの車が多い。観光バスが一台止まって、中から夏休み中の子供たちが大勢降りてきた。別のワゴン車からも子供たちが出てくる。
「危ない!どこ見てんのよ」と、車が接近しているのを見ないで走り出した子供を叱る母親の大声。どこにでもある風景だ。いつも一人旅のボクは、家族連れの旅行をしている人たちが少しうらやましく、じっと眺めていた。
ハイウエーオアシスを出ると、香川ナンバーの大型トラックに追い越された。「ボクがこれから向かう四国のトラックか……」。何とも言いようのない思いがギューッと胸を締め付けた。
福井県の「南条サービスエリア」でも休憩。すると、おじさんが話しかけてきた。
「すみません、この先の今庄にパーキングエリアはなかったですかね?」
「うーん」。聞いたことがないのである。念のため、縛り付けたバッグの中から地図を取り出して確認しながら、「今庄はインターしかありませんよ」と答えた。すると、「そうですか……」と困ったような顔をしている。連れと待ち合わせの場所として今庄を指定したのだろうか。こればかりはどうしようもない。
北陸自動車道は福井県の敦賀インターで下りた。名神高速を走るほうが近いのだろうが、若狭方面は三方五湖しか行ったことがないので、そちらを通ってみたかったからだ。高速料金は三七五〇円だった。二輪車は普通車の八割程度というが、それでも高い。日本経済の阻害要因であることはみんなが感じていることだろう。
この先は高速道路が完成していないので、五五キロほどは一般道を走ることになる。美浜町のあたりでは道路沿いに「テロ警戒中」の看板がある。原発銀座だけに、そうしたものもあるのかと思っていたら、あとで四国の道路沿いにもいくつも見かけた。とにかく嫌な世の中になったものだ。
確かに、アメリカの同時多発テロの記憶が覚めないうちに、ロンドンでの同時爆弾テロである。世の中は危険な香りに包まれている。日本も人ごとではない。「高度経済成長から成熟社会へ」……というが、うそである。成熟なんかしていない。混沌としたカオスの社会になりつつある。人類はどうしてこうまで愚かなのだろうか。(つづく)