

「江差の繁次郎」
今朝は笑いの世界的権威、筑波大名誉教授、村上和雄さんの
著書よりご紹介します。
笑いの効用を科学的に実証するために、私たちは糖尿病に着目しました。
糖尿病の指標となる血糖値は、ほんの少しの血液で簡単に測定ができますし、明白な結果が出ます。
また、血糖値が変化した場合、「どの遺伝子のスイッチがオンになっているか」を調べることもできるからです。
実験は糖尿病患者に対して昼食後の40分間に、1日目は医学部教授による「糖尿病に関する講義」を聞いてもらい、2日目は落語を楽しんでもらい、終了後に採血をして血糖値を測定するというものです。
講義は当然ながら真剣なもので、笑いはありません。
吉本興業と共同で3回実験をして、3回とも漫才や落語を聞いた人のほうが血糖値の上昇が抑えられたという結果になりました。
もちろん被験者の人数も条件も限られたものですから、まだ十分に科学的な臨床実験とは言えませんが、今後の研究に向けた貴重な第一歩となったことは間違いありません。
これは余談ですが、実験を大阪でやると困った問題が起こるのです。
というのも、大阪のおばちゃんたちは真剣な講義でも笑うんですよ(笑)。
だからデータの信憑性が低くなる。
地域差や個人差というファクターがありますから、これも非常に難しい問題なんですね。
また、私の友人で、イメージ療法をやっている人がいます。
患者に自分の胎児期をイメージさせて、自分が両親に待ち望まれて生まれてきたことを実感させることで、病気を治している人がいるんですよ。
その人と、いま共同実験をやっているのですが、そのイメージ療法をやっていると確かにガンが治る場合があるんです。
つまりそのときに、ガン抑制遺伝子のスイッチがオンになるんですよ。
これはまさにイメージが物質に影響を及ぼすということであり、意識が遺伝子のスイッチのオンとオフにかかわっているという好例だと思います。
いま分かっていないことを否定するのは、非常に非科学的なんです。
分からないことはいっぱいあるし、特に命に関しては、ほとんど分かっていないのですからね。
科学の成果が絶対的な真理ではありません。
私に言わせれば、科学とは限定つきの真理なんです。
遺伝子も物質ですから、意識やイメージが物質である遺伝子のスイッチのオンとオフに影響するのは確実です。
それを実証するためにも、私たちはデータを増やしていく必要がある。
笑いの研究がその先鞭になれば、と思っています。
「心の力」
村上和雄&玄侑宗久
致知出版社より。
あなたにすべての善きことが雪崩のごとく起きます