今日はまだオリンピック競技になってから歴史の浅い、女子ウェイトリフティング♪その代表選考のお話です。
日本の女子ウェイトリフティングで、日本に与えられた出場枠は3つ。
柔道のように、ウェイトにより7階級に分けられているので、たった3つの枠を、
7階級の選手たちが競いあう。
しかも、一つの枠は、実績や実力で三宅選手が内定している。
残り2枠を掛けた闘いは、熾烈だ。
北陸:金沢に、女子のウェイトリフティングで4人の候補者を輩出する学校法人
金沢学院。
中でも重量級である75kg超級の候補者2人が所属している。
嶋本麻美選手と城内史子選手の2人だ。
ウェイトリフティングという競技は、一人で行う競技。
一見、仲間の存在なんて必要ないように思う。
でも、金沢学院で職員として働く4人にとっては違っている。
練習場所は常に一緒。
代表候補者の練習でも一緒。
誰かが練習でバーベルを持ち上げるチャレンジをしているときは、
常に周りの仲間が大きな声で励ましの合いの手を入れる。
誰かがバーベルを持ち上げるのを横で見て、アドバイスを送り、
自分がバーベルを持ち上げるのを横で見てもらい、アドバイスをもらう。
お互いにライバルでもあるけど、自分を高めてくれ、共に情熱を持つ仲間なの
だ。
4月の代表選考を兼ねた大会で出場権を得るための熾烈な戦いが始まった。
特に最重量級で競い合う城内選手と嶋本選手の闘いはなお熾烈さを極める。
城内選手は、148kgの日本記録を持つ選手。
最近は調子が上がらず、練習では140kgを挙げるのも苦しんでいる。
しかし、嶋本選手を倒して、出場権を獲得するには日本人がまだ成し得ていな
い150kgを挙げなければならない。
嶋本選手は、恵まれた筋力を持ち、台頭してきた選手で、現在日本ではトッ
プ。
どこまで自己ベストを更新できるか?に期待がかかっていた。
代表選考会へ向けて練習を重ねていた、
まだ肌寒さが残る、そんなタイミングだった。
嶋本選手が練習場へやってくると、監督に報告した。
「代表の内定が決まりました」
それは誰もが予想していなかった。
外国の選手がドーピングにひっかかり、日本の出場枠が1つ増えたのだ。
多くの仲間から祝福され、何十人もの選手たちで輪ができているとき、
入口からもう一人の最重量級の候補者、城内選手が練習場に入ってきた。
その表情から、すでに嶋本選手の内定を知っているようだった。
数十分後、城内選手と嶋本選手が顔を合わせる。
城内選手が切り出した。
「おめでとう!」
悔しさを押し殺すように、笑顔でそう言った。
悔しかったはずだった。
「なんで?」って思ったはずだった。
まだ選考会も行われていない状況での突然の発表だったから。
城内選手同様に、少ない出場枠をかけて闘っている、同じ職員きながらオリン
ピックを目指していた、一つ下の階級の橋田選手にしても、内心は穏やかでは
なかったはずだ。
それからの日々も、今までと同じように、お互いにアドバイスをし合いながら、
選考会に向けて日々が過ぎていった。
選考会当日。
残り2枠を巡って、重力に逆らいながら、小柄な女性たちが、重いバーベルを
次々と持ち上げていく。
城内選手にもまだ可能性が残されている。
この選考会で嶋本選手よりも重いバーベルを持ち上げれば、可能性は残され
ているのだ。
嶋本選手も必死だ。
この選考会で、「自分が代表にふさわしい!」ということを証明したかった。
今まで1日に、何十トンものバーベルを持ち上げてきた日々は、このたった1
日の、そして、たった数回の試技のためと言っても過言ではない。
ウェイトリフティングには2種目がある。
スナッチという、地面に置いたバーベルを頭上へ一気に引き上げて、立ち上が
る種目。
もう1種は、クリーン&ジャークと呼ばれ、地面に置かれたバーベルを、一度肩
まで持ち上げ、その後頭上まで持ち上げるもの。
この2種目の合計で順位が決まる。
フィギュアスケートのショートとフリーで考えるとイメージが湧きやすい。
スナッチが終了した時点で、城内と嶋本の差は4kg。
嶋本がリードするも、ジャークを得意とする城内は、嶋本にプレッシャーをかけ
ることに成功した。
そして運命のジャークへ。
嶋本はジャーク3回目で140kgに挑戦し、見事に成功!
今度は、差が8kgとなり、城内へプレッシャーがかかった。
城内が優勝するには、145kg以上を挙げなければならない。
しかし・・・・
2、3回目も、145kgを挙げることができずに、城内は2位に終わり、
その時点でオリンピックへの夢が断たれた。
試合後、嶋本は、これまでの城内とのことを聞かれ、こう答えた。
「内定が出てから、城内選手と何を話して良いかわからなかった。それがなに
よりも辛かった・・・・」
そう涙ながらに語ってくれた。
ライバルであると同時に、よき仲間であり、心友の存在があったからこそ、ここ
まで来れたのだ。
城内は、試合後、「やりきった!」といつものように屈託のない笑顔で笑った。
きっと、選考会までの日々は、口には出さないが、苦しんだはずだった。
全力を出し切り、納得のいく結果だといった。
同時に、競技生活も引退した。
城内は、母親に引退することを告げることが最もつらかったという。
母親は温かく、それを受け入れてくれた。
「今までやってきたことは、これから先に絶対に無駄にはならないからね。お疲
れ様」と。
(NHK『重力に逆らってまで?映画監督・西川美和が見た女子ウエイトリフティン
グ?』)より。
オリンピック出場への道のりには色んなドラマがあるんですね!
感動をありがとう
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(・∀・)人(・∀・)