『屈辱に雪辱を』

2013年6月1日著述

 

カラスに襲われた。

何が起こったのか分からなかった。
音楽を聴きながら、霊園外周を歩いていたら、後頭部に突然の衝撃。
一発目に後頭部をハンマーで叩かれたダルマ落としの気分で、理解不能。
後ろを振り返るも誰もいない、で、見上げたらカラスに囲まれていた…。

知らない間に鳴らされていたゴング。
客席でもない。セコンドでもない。リングに立っている俺。
「マジか…」と思うか思わないかのタイミングで二発目の攻撃。
今度は理由がハッキリしているので、頭でカラスの脚を確認できる。

どうする?

次の瞬間。
俺は走って逃げていた。

俺のステータス「ギャバン〇」の横に記されたであろう「カラス×」。
結婚式、新郎新婦紹介VTRで映し出されるであろうカラスから逃げる俺の姿。
武井壮に笑われ、畑正憲に無視されるであろうカラスとの結果。

孫の代まで言われるような屈辱。
これほどの屈辱はない。

俺はカラスを絶対に許さない。
今日からカラスに勝つために生きていく。

屈辱に雪辱を。

まず、カラスより大きな声で「カァーッ!」と言う練習。
そして、朝のゴミ集積所に、どのカラスよりも先に陣取る。

なんだったら、ゴミよりも先に陣取る。
カラスが人を襲おうとしたら、そのカラスより先にその人を襲う。
カラスに白は似合わない。必ず黒星つけてやる。

カラスよ、これが俺だ。

 

    ♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

あの屈辱から10年経った今、僕は「カラスチャレンジ」を生み出していた。

恐怖を僕に植え付けたカラスに、どれだけ近づいて写真を撮れるか、

これが「カラスチャレンジ」である。全く持って誰得でもないチャレンジ。

でも、チャレンジとは往々にして誰得でもないものだ。

 

午前中、肌寒い雨の中、買い物に出かけたところ、カラスを発見。

これはカラスチャンス、カラスチャレンジだ。ドラクエウォークをわざわざ止めて、

カラスにスマホを向ける。少しずつ少しずつ近づく。逃げるなよ、襲ってもくるな。

そして、渾身の一枚を激写。それを、許可なくSNSにアップ。

どうだ、世界に自分のイケてるかイケてないか分からん写真をさらされる気分は。

 

カラスよ、これが45歳の俺だ。
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