閉じた傘を、銃に見立てて歩いている小学生を発見。
傘を構え、遠くて分からんけど、多分、片目をつぶってスコープを覗くマネして、
銃を撃った時に、傘の先をちょいと上げるという芸の細かさ。
何を狙って撃っているのか、小学生は、あちこちに銃をぶっ放している。
そんな小学生と僕は、車道を挟んですれ違うよう、近づいていた。
僕は、小学生に興味がないということをアピールするために、彼を見ず、
反対側の建物の方を向いていた。すると、その小学生、
僕が見ていないことをいいことに、僕に、銃を向けてきた。
なぜ、それを僕が分かったのか。建物の大きな窓ガラスに、
小学生の姿がバッチリと映っていたから。彼が撃った瞬間に、
反対を向いたまま僕が倒れたら、きっと、びっくりしただろうな。
せっかく、興味があるなら、手を伸ばしてみようということで、
amazonで注文した、スマホ用のVRゴーグルが届いた。
ちょっとまずこれどんなもんかということで、サンプル動画で試す。
しかし、片目つぶってみないとダメだし、ただ、映像観てるだけだし。
あーこれは、やっちまったかと思ったけど、諦めるのは、まだ早い。
とりあえず、適当なVR動画を購入してみる。
すると、やっぱりサンプル動画とは構造が違うことが分かった。
実際のVR動画は、スマホの画面を二分割して、同じ映像が流れていた。
これをVRゴーグルを通して観ることによって、立体的になるに違いない。
さっそく、観てみる。目の前にザクがいる。僕は、ガンダムに乗っているようだ。
とりあえず、目の前にいるザクは放っておいて、部屋の周りを気にしてみる。
二人きり部屋かと思ったら、顔真っ白の子供が覗いているかもしれない。
改めて、ザクの顔を見てみる。確かに、顔の輪郭が浮いているように見える。
次の瞬間、僕は慌てて、VRゴーグルを外した。
これ、映像に没入するってことは、現実の世界の情報を遮断するわけで、
その間抜けさと言ったらありゃしない。しかも、これ、ことがことだから。
ことっていうか、ある意味、一年戦争だから。
実際の部屋にいる、顔真っ白の子供に「何してんの?」って聞かれたら。
「え、あ、あのー、ザクと戦ってた」
「あ、これは。あのー、ビームサーベルで戦おうと思って」
「ニヤニヤしてたのは、オラ、ワクワクしてきたぞ的な奴だと思います」
最後、敬語になっちゃってるもん。