老年期の生き方

北川 聖

 

 

 

青春期を生きるのも難しいが

老年期を生きるのも難しい

もう彼にとっては大多数のことは経験したこと

 

世の中は新しく更新されていくが

彼一人更新されることはない

苦虫を噛み潰したような顔で死ぬまで生きる

彼がやろうとしたことは他の誰かがやってしまった

彼が彼である意味がなくなってしまった

 

一つ深いため息をする

 

もう随分前から世の中のことに興味を失った

CMを見たくないのでNHKしか見ない

彼の憂鬱はいや増していく

こんなはずじゃなかったという後悔に苛まれる

世の中についていけない苛立ちに気分を害することもあるが

もう十分だという気持ちが強い

 

自分の人生には何も起きないという諦めが心を暗くする

せめて夢の中に逃避したいがなかなか寝られない

このままではセルフネグレクトになりかねない

心の底から湧き上がる力が欲しい

力強く生きていきたい

その気があっても

長続きしない

今日も肘をつき

頭を支える