恋は幻想ごっこ
相手を想うほど幻想が膨らんでいく
実像とは似ても似つかない相手の姿
それを実像と見誤る
虚像に自ら騙される愚かさよ
だが騙されることが恋の本質
騙し騙され恋の炎が燃え上がる
いつしか覚めた時、隣に眠る人が
誰だったのかと慄然とする
この物体は何かと不審がっても後の祭り
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遠い日の思い出は
あこがれの初恋のきみ
初めてきみに触れた時
ぼくの魂はふるえた
愛というおぼろげが
確かなかたちになった
初めてきみを抱いたのは
再びきみと出会った時
きみは美しく成長していた
ぼくは眩しくてきみを見られず
ふるえる手で抱きしめて口づけをした
今はもう幻のよう
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美しいメロディが霊感を与えてくれる
過ぎ去った思春期に夢見ていたことを
思い出させてくれる
今の汚れた心を切り離さなければ
少年の心は戻ってこない
あの時ほど少女を理想化して
愛したことはない
私の空想の中で少女は生きていた
今の醒めた心の中では少女は息絶えて
死んでしまうだろう
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君の命が尽きようとしている
僕のできることはただ祈るだけ
青春の語らいや溢れる笑顔が
思い出される
あの君がこんなことになるなんて
誰が想像できただろう
君を傷つけた男を僕は許さない
必ず仇を討ってやる
この忍ばせた刃で
君の無念を晴らしてあげる
こんなに体が震えて
どうにかなりそうだ
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眠りの前に私は祈る
穏やかに一日を終えたかと
誰も傷つけないで終えたかと
静かなる聖夜
ケーキに灯された愛の光
二人で吹き消して
静謐に時は流れ
音もなく雪が降り
全てのものに感謝して
やがて安らかな眠りにつく
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何もかも疎ましく思った時
人生を投げ出したいと思った時
心の底から
それでいいのか
という声が聞こえる
自分に恥じた生き方をしていないか
と問いかけてくる
私はその声を遮断して耳を塞ぐ
もう無理だ
私は呟く
すると見えない力が私を張り倒す
まだ人生は終わっていないぞ
と叫ぶ
私は覚醒する
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君の涼やかな瞳
君の理知的な瞳
君の揺れる瞳
君の燃える瞳
君の訴える瞳
君の濡れた瞳
君の眠りの瞳
愛しているよ
この世の何よりも
全てが闇に滅びても
君に見つめられた真実は永遠
二人は死すべき肉体を離れ
イデアそのものとなって生きる
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あなたは私を愛してくれますか
こんなに見すぼらしく落ちぶれた私を
帰る家もなく病気持ちのこの私を
愛してくれたら私の愛をあげましょう
私は野良猫、明日をも知れぬこの命
愛してくれたら極楽浄土へ行けましょう
さもなければ地獄へ堕ちるとは言いません
ただほんの少しの愛が欲しいんです
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少し眠って夢を見た
望むものを見させてくれた
大学の頃憧れていた人と二人だけで話をした
優しい声と微笑みが鮮やかに甦り涙する
休みの日は微睡みながら一日を過ごそう
疲れたら眠れば夢と現実を行き来できる
休みの日は魔法の日
時間は自分の思うがまま
一人の世界に浸って
本当の自分に戻れる
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夜に私の狂気は目覚める
破壊神が乗り移る
この世の全てを破壊するまで怒りは止まない
全てを虚無に還すまで神とも争う
その戦いに勝った時この世は永遠の無になるだろう
それこそが至福、暗闇の中で私は咆哮を上げるだろう
狂った獣は牙を抜き自分の喉を掻き切って死ぬだろう
太陽が昇る時までに
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花に埋もれた森で暮らしたい
夜空には蒼白い月が煌々と輝き
狼の遠吠えが孤独とよく似合う
森の獣が眠りに落ちる時
ようやく睡魔が訪れる
鳥の囀りが朝を教え
朝露が煌めいて日に溶け込み
花ざかりの森は薫りを放ち
私の胸は苦しくなる
薔薇のため息に気を失い
遠い夢の名残にうなされる
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美しい女(ひと)
あなたの美しさが永遠でないのが哀しい
その清らかな美しさに時は止まったかのようだ
あなたの深い愛情がこの世を悪から救いそうだ
その慈しみの涙がこの世を不幸から救いそうだ
女神から祝福されたあなたにも死はやってくる
せめて美しいまま伝説になって記憶に残って欲しい
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「異邦人」を読んで仏文科に入ろうと思った
カミュは事故死していた
サルトルとは同時代を生きていた
「嘔吐」の世界観に惹かれた
シュルレアリスムに興味はあった
だが芸術が現実を超えるとは思わなかった
現実に影響を及ぼすのは科学であり原爆であり
芸術はその炎の中で燃え尽きると思った
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ビッグバンが空想のものだとは
誰でも思っている
ただ宇宙論者を除いては
この大宇宙が無の一点から生まれたなんて
神様でも思いつかない
神が宇宙を創造したと言った方が
遥かに信じられる
ただ神は何から生まれたかを問うと
無限後退の罠にはまる
初めに光ありきでいいではないか