僕には神楽坂に、お気に入りの映画館があります。
とある千葉から上京して、今日もそこにやって来たのです。
来てみてびっくり。
小さな古びた映画館の周りを、行列が取り囲んでいるではありませんか。
そういえば今日は、ゴールデン週間とか黄金ウィークとか呼ばれる1週間の内の1日なのです。
映画館が混むのは当然といえます。
映画鑑賞をあきらめ、神楽坂を散策することにしました。
僕は知らぬ間に年をとってしまったようで、これが中々、楽しいもので。
情緒、溢れる街並みを歩いていると、ふと懐かしさと平和が充満した不思議な心持ちになります。
もちろん腹がたつことも多々あるのですが。
まず、神楽坂の至る所に設置されたスピーカーから流れる「拝啓、父上様」のBGMにはがっかりでした。
この曲は嫌いじゃないですし、もはや好きな方なのです。
ただ、神楽坂が率先してかけるのは違う気がします。
老舗の名店の看板の横には、二ノ宮和也のポスターがありました。
決してこの人が嫌いな訳ではありませんし、むしろ好きです。
何せ「硫黄島からの手紙」で、かなり僕は感心してしまったのですから。
だからこそ神楽坂には、客寄せのポスターではなく、もっと深く感じ取って欲しいのです。
神楽坂を舞台とした作品に、神楽坂が合わせる必要はありません。
神楽坂は神楽坂なのですし、振り回されなくてもいいのでは、と思うのです。
僕がお気に入りの映画館を見つけた当初、若い顔はほとんど見当たりませんでした。
確かに、あのドラマを通して、神楽坂を観光する若者は増えたと言えます。
もちろん素晴らしいことで、地域活性化に繋がるでしょう。
ただ不安なのです。
ある石の裏にスポットライト当て、ここを住処とする虫をどかすように他の虫が群がっていきます。
その光が少しずつ寿命に近づき輝きを失っていった時、かつてそこを愛した虫がまた戻って来てくれるのでしょうか。
ただただ不安なのです。
拝啓、父上様。
神楽坂が壊れていくような気がします。
敬具