【80点】監督：原廣利

杉咲花、ただ者ではない。
女優力が、さりげなく尖っています。

原作：柚月裕子、小説。既読。

ストーカー被害を受けていた愛知県平井市在住の女子大生が、神社の長男に殺害された。
女子大生からの被害届の受理を先延ばしにした警察が、その間に慰安旅行に行っていたことが地元新聞のスクープ記事で明らかになる。
県警広報広聴課の森口泉 (杉咲花) は、親友の新聞記者・津村千佳 (森田想) が記事にしたと疑うが、身の潔白を証明しようとした千佳は一週間後に変死体で発見される。
後悔の念に突き動かされた泉は、捜査する立場にないにもかかわらず、千佳を殺した犯人を自らの手で捕まえることを誓い行動を起こす。

久々の原作既読。犯人知ってるので、複雑な感じです。
今回、小説の読み直しはしないで、映画鑑賞しました。7年ほど前に読んだので、細部は忘れており、それが正解。映画として楽しめました。

持続する緊張感、ミステリーとしても、謎を維持しながら映画が進行します。
ストーカー殺人事件、新聞記者殺人事件、カルト教団、公安……点を線に、上手くつないでいきます。

ドローンを使った空撮 (たぶん) が、美しいと感じました。

杉咲花、主人公の県警広報広聴課職員・森口泉。
刑事ではない警察職員が単独捜査をする、この違和感を感じさせないのは、杉咲花の演技力に担う部分が大きいと感じました。
普通の女性の後悔と芯の強さ、嫌味がありません。

森田想、森口泉の親友で新聞記者・津村千佳。
最近、売れてきて (セリフの量とか…) メジャー系作品にも頻繁に出演しています。
今年公開の『辰巳』ほどのインパクトはありませんが、きちんと印象に残る演技です。

萩原利久、県警生活安全課の刑事・磯川俊一。
泉に好意をよせる後輩、少し出番というか、キラリが少ないかな。

安田顕、県警広報広聴課の課長で元公安刑事・富樫隆幸。
久しぶりに怖い冷徹な「安田顕」を見せてもらいました。煙草吸いすぎ。

豊原功補、富樫と同期の捜査一課長・梶山浩介。

強引で無骨な刑事、でも実はイイ奴感が出ています。煙草吸いすぎ。

サクラ＝警察の公安部署。
小説通りなのですが、公安＝悪の図式が強すぎます。

(以下ネタバレ)

ストーカー殺人の犯人はカルト教団の神社長男。
それをつかんだ新聞記者・富樫は、元公安刑事・富樫に託す。
富樫は公安に通じていて、カルト教団のスパイを使って津村を殺害する。
富樫はカルト教団を潰すため？、津村の情報を握りつぶす。

映画では、富樫が昔体験した、カルト教団の無差別毒ガステロ事件と、その原因となったエピソードが描かれています。
公安の組織犯罪というより、富樫の私怨に感じてしまうのですが、これってどうなの？

あと、カルト教団に捜査令状持って、乗り込むシーン。
犯人が車で逃走して、結果、車が事故を起こして死んでしまします。
これ警察の大ミスですよね。こんなに無能なの？
というか、ここで死なす必要はわかるので、もう少し上手く作ってください。(ブレーキ操作で確実に死にますか？カースタントが撮りたかったの？)

被害者の捜査資料、刑事課長から泉経由で被害者の母親に見せる (渡す) シーンがありますが、こんなことって本当にあるのですか？昔の刑事ドラマみたいですが……

最終対決、杉咲花＝森口泉 vs 安田顕＝富樫隆幸。クライマックスです。
仮説を積み上げ問い詰めていく泉、その仮説を受ける富樫。
見応え十分の、演技対決です。(泣き叫んだりしない「静」の攻防がよかった。)

富樫は逃げ切ります。

そして、泉は警察職員を辞め、警察官を目指します。エンドマーク。
小説既読で結果知っていたのですが、無念よりこれからの未来を感じさせてくれます。
ある種の爽快感もあり。正解です。

PS
小説では「月下のサクラ」という続編があります。
この話の続編ではなく、刑事になった泉の奮闘ストーリーです。
4年後ぐらいに、杉咲花さん主演で映画化してみてはどうでしょうか？

朽ちないサクラ