グループ活動を”卒業”したアイドルがキー局のアナウンサーになるケースが増えている現状を受けてか「女子アナになりたいならアイドルを経るのが近道なんじゃね?」なんて意見も耳に入ってくるが、それは全くの見当違いだと鬼は思う。アイドルからアナウンサーになるのがいかに難しいか、その理由を三つ挙げてみよう。

 

まず一つ目、そもそもアイドルになること自体が難しい。将来のアナウンサーを見据えた場合、アイドルであれば何でもOKというわけにはいかない。自称アイドルは当然論外だとして、オタク認知度が高いだけはまだ足りない。やはりそこはキー局が自社のメリットになると考えるくらい、世間的に名の知れたグループに所属していた必要がある。例えば、現在業界トップに君臨する乃木坂46。一昨日だったか五期生11人の加入がニュースになっていたが、彼女たちは応募総数87,852人の中から選ばれている。合格率、実に0.01%。これを難関と言わずして何が難関と言えようか。

 

二つ目は、学業との両立が難しい。ライブや番組収録など、アイドル活動に重きを置けば自ずと学業は疎かになる。一般の高校の中には「アイドル活動禁止」を校則にしているところもあるくらいだ。よって、彼女たちの大半(特に上京組)は何かと融通のきく芸能コースのある高校に通う。そうなると進学の選択肢はほぼゼロ。アナウンサーの採用条件である「大学卒業見込み者」になることはできない。

 

そして三つ目、アイドルとして売れ過ぎてはいけないという難しさがある。キー局のアナウンサーになろうと思えば、遅くとも就職活動期に入る時点でその決断をしておかなければならない。しかしながら、十代で加入したとして、二十代前半はアイドル活動の中で一番の充実期となり得る。更に人気メンバーともなれば、ドラマにモデル、バラエティにと引く手数多。グループ全体のことを考えても、そう易々と”卒業”の決断は下せない。アイドルからアナウンサーの道へ方向転換できるのは、皮肉なことに売れっ子ではないメンバーなのだ。アイドル活動に青春を捧げながら、でもアナウンサーになるためあまり人気が出ないように……なんて、不確定要素ばかりなのにそんな匙加減できっこない。

 

そもそもアイドルになるのが難しい。運良くアイドルになれても、学業との両立が難しい。努力の末両立ができても、売れ過ぎなくするのが難しい。さあ、これでも「女子アナになるならアイドルを経るのが近道」かね? アナウンサー志望の女子たち、惑わされてはいけないよ。

 

余談だが、鬼の同期でキー局アナウンサーになった子はいなかったけれど、おそらく志望はしていたのだろうなと想像できる子は何人かいた。というのも、卒業アルバムに掲載された写真が、彼女たちのものだけ持ち込みだったのだ(普通の生徒はアルバム写真担当のカメラマンに学校で撮ってもらったものが載る)。アルバムから明らかに浮いていた幾枚かの写真が、二十年近く経過した今でも脳裏に残っている。因みに、今の鬼が着ているのは、当時卒業アルバムの中でも着ていた安物の革ジャンである。