「上品な女性が好き」っていうのと「お茶漬けを豪快にかき込む女性が好き」っていうのは決して矛盾しない、つまりは両立すると思っている。

 

映画『グリーンブック』で、ヴィゴ・モーテンセン演じるトニーが運転中に、後部座席のマハーシャラ・アリ演じるドクターに対してケンタッキーフライドチキンを勧めるシーンがある。ドクターは初め「要らない」と頑なに断っていた。「今まで食べたことがない」とか「(膝に掛けている)毛布に脂が付く」とか「皿とフォークがない」とか、何かと理由を並べて。しかし、トニーは一切聞く耳を持たない。「いいから食え」「手で食え」「旨いから食え」とまさに押しの一手。最後は「そっちに投げるぞ」と半ば脅す格好でドクターにフライドチキンを無理矢理手渡した。渋々口にするドクター。「明らかに衛生面に問題がある」などとぶつくさ文句を言いながらも、結局完食してしまう。そう、トニーの言う通り“旨かった”のである。

 

フライドチキンなんてものは、手で掴み大口でかぶり付くのが醍醐味。フォークやナイフを使ってちまちま切り分けて食べたのでは、たとえ味は同じでも感じる“旨味”が格段に落ちてしまう。同じファストフード仲間のハンバーガーにしたって、口の周りをケチャップやマスタードで汚してなんぼ。それはあくまで一番旨いと感じる食べ方、これぞ「王道」といった食べ方をした結果なのだ。その光景を見て下品だと断じるのは、あまりにもナンセンスというものだろう。

 

お茶漬けに話を戻そう。レンゲで掬って、フーフーしながら一口一口丁寧に食べるのも悪くない。でも、やっぱり、箸でもって熱いのも厭わずサササっとかき込む食べ方こそが王道で、それを自然にやってのける女性は下品どころか寧ろ素敵だと思う。無論、食べ方はそうであっても「あ~うめぇ~」なんて言葉遣いをした時点で百年の恋も瞬間冷却するのだけれど。

 

余談だが、文中で例に挙げた『グリーンブック』は実話を基にした映画。黒人差別を題材にしているものの、そこかしこにユーモアが散りばめられているので、『星の王子 ニューヨークへ行く』ほどではないにしろ、幅広い年齢層が比較的ライトな感覚で観ることのできる作品になっている。少なくとも、鬼は面白いと感じたよ。