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第一章 人事部は何をやっているのか
第二章 考課と異動の不満の矛先
第三章 社員の「情報」を集めるルール
第四章 人事部員が見た出世の構造
第五章 正義の味方はしっぺ返しを受ける
第六章 曲がり角に立つ人事部
第七章 社員の人生は社員が決める
「人は自分のことを3割高く評価している」
「タレントの島田紳助氏が「(ライバルの)誰かにちょっと負けてるなあと思ったときは、だいぶ負けている」と自信の著書に書いている」
「仮に誰もが3割程度自分のことを高く評しているとすれば、低く評価されたままの社員は、3割余分に落ち込むことになる」
同感。誰でも自分はかわいいもの。会社としては最高の評価をしたと言ってくれているのに、もっと評価されてもいいなんて思ってしまう自分がいる。
幸い、私自身はまだ評価される側だが、評価する側になったときに肝に銘じなくては。
「担当する社員の顔を知り、かつある程度の行動予測ができるのは、最大でも300が限度である」
著者の体験だけでなく、何人かのヒヤリングでもそうなのだそう。
もっと少ないのでは?というのが個人的な感想。
300人も把握できるのだろうか?100人くらいが限度じゃないかな。
ある一定以上の大企業であれば、という前提付きであれば納得できるかな。
中小企業ほど、個々人の裁量範囲が大きく目が届かなくなるので。
「HP(ヒューレット・パッカード)には会社設立から18年間も人事部がなかった。」
「「部下が管理者に相談しやすく、管理者が部下の悩みや不安に敏感である必要がある。人事部があると、この管理者と従業員の直接の関係に割って入る可能性があると考えていたからである」と創業者の1人デビッド・パッカードは述べている」
前にもどこかで読んだことがある記述だが、すっかり忘れていた。
読んでも読んでも忘れる私としては、忘れないくらい読むしかない。
こういう話を頭の片隅にいれておくと、クライアントの社長さんとお話をするときなど、話のタネになりやすい。
内容としてもおっしゃるとおり。
「社内経歴を見るだけで会社の評価が分かる」
大企業であればそうなんだろうな。
公務員とかもそうなんだと思う。事務次官までのレールが決まっていて、どこでそのルートから外れたのかもすぐ分かるようだし。
ただ今後はこんな人事の運用は変わって行くのだろうというのが著者の主張。
「役員を選ぶ基準は忠誠心」
「やっぱり社長というのは、常に究極の選択を迫られてもいる。いつも究極の選択を迫られている人間に何が必要かというと、自分を応援してくれる人間であり、私がこうしてほしいと言ったことを、ちゃんと忠実にやってくれる人間が近くにいるということが一番重要なんですね。だから常務以上の役員を決めるときは、私への忠誠心が一番の選考要因になるわけです」
これも同感。ただクライアントの社長さんを見ていて思うのは、忠誠心は大前提、それに加えてただのイエスマンではなくきちんと自分の意見を持っていることを求めていると思う。
これってなかなか両立しづらく、自分の意見を言われると忠誠心に欠けてるようにも見えてしまうし、意見がなく社長に従う役員は能力が足りていないように見えてしまう。
これを見極めるのも社長の資質ってことなのかな。
ま、中小企業のオヤジ(社長)は子供に跡を継がせることが多いので、誰を選ぶかではなく、既に選ばれている後継者の育成に手間ひまをかける必要があるのだけれど。
「後任の社長を選ぶときには、その役員だけではなくて、グループ単位で役職員の姿が見えてくる」
たしかに。その人一人ではなく、その人を持ち上げたことで一緒に持ち上がって来る人をあわせて考えてしまうってことですね。
能力だけであがるのは課長まで、その先は内部での政治力と著者は言っているが、それとも矛盾しない。
内部的な政治力に長けた人は、グループ単位で考えても社内での力があるはずだから。
「自分の立場を覆す可能性のある人物は後任には選べないだろうね」
大企業の社長のコメントらしい。
判断が難しいコメントだと個人的には思う。
解釈の仕方によっては、自分よりだめなやつを後任に選ぶと言っているようにも聞こえる。
もちろんこの人が言った意図は、自分より優れた人がだめな訳ではなくて、やめた後も自分をたててくれる人という意味なのだろうけど。
これは中小企業であればすごく同感。
特に中小企業のオーナーが親族以外に社長を渡す場合とか、子供が若すぎるのでつなぎをしてもらう場合などは、自分の立場を配慮できない人は後任にできない。
「大企業における課長クラス以上の「出世の条件」を私なりに一言で表現すると「(結果的に)エラくなる人と長く一緒にやれる能力」ということになる」
そうなんだろうなあ。
ただのごますりとは違う、と著者は言うが、ごますりを徹底することで乗り越えてしまう気もする。
もしくは大企業はさすがにごますりか否かを見分ける目を持っているということか。
中小企業はなかなかそこまで見切れず、ごますりが上にあがって行くこともあるように思う。
「社員を正社員として囲い込めば組織に対しコミットメントを誓い、いい仕事をするのだと誤解していた。やっかいなことに、組織や上司にもたれかかっている人ほどこの誤解に囚われやすい」
同感。今時正社員だからいい仕事をするなんてのは間違いなんだろうな。
会社に共感している社員のパフォーマンスはあがると思う。誤解する人は、正社員だから会社に共感しているはずと誤解しているのだろう。
終身雇用の時代であれば、正社員=会社に絶対服従だったと思うが、今はなかなかそうもいかない。
「リストラをする立場の人がより傷んでいる」
リストラ、リストラといわれて久しいけれど、リストラ担当になった人は、リストラ完了後退職しているケースが多い。
結果としてリストラ担当にまわされたということが、リストラ対象と同義であるかのよう。
日本人の美徳ではあるのだろうけど。
「会社は3つのタイプの社員によって構成されるようになる。
① 高機能で専門性の高いプロ集団(専門社員)
② プロ集団を支えるルーティンの仕事をこなす比較的低コストの社員(支援社員)
③ 経営者と一体となって組織を機能させる中核社員(コア社員)」
人事が大きく変動していく現在において、今後の指針を示している。
内容としては同感。
ただ、まだこれからの人生が長い私としては、終身雇用でレールが引かれていた過去がうらやましくも感じる。
自分がどの区分で生きて行けるのか、生きて行きたいのか、考えなければいけないな。
まだまだ働く時間は長いので。
人事部は見ている。 (日経プレミアシリーズ)/楠木 新

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