「貴様、またこの俺を呼び捨てにしおって」
さすがのマミも刀を振り上げられて、口では強いことを言っても、
恐怖に涙が頬を伝わった。
信長はその涙に刀を納めて、じっとマミを見つめた。
「秀吉、さがれ」
「かしこまりました」
そして、信長とマミだけになった。
マミは泣きじゃくっていた。
信長はそっと手をマミの頬に添えた。
「すまん、泣くな、俺はお前を側におきたい、信玄ではなく、俺を慕ってくれ」
そして、マミの唇にそっとキスをした。
マミは抵抗せずに、信長のキスを受け入れた。
信長はマミの首筋に唇を這わせた。
何?この感じ、織田信長とは思えない、私、身体がすごく求めてる。
「マミ、俺はお前が愛おしい」
ダメ、このままだと私は……
マミは信長から身体を離して、その場から逃げ出した。
 
 
 
 
「マミ」
俺ではダメなのか。
信長はマミに惚れた、しかしこの時靡かない女は深追いしないのが常なのだが、
どうしても諦めることが出来なかった。
マミは与えられた部屋に駆け込んで襖を閉めた。
息が上がってドキドキが止まらない。
キスは初めてではないが、こんなにもドキドキした経験はない。
しかも信玄様ならともかく、織田信長のキスにこんなにも胸が高鳴るなんて、
マミは自分の気持ちがわからなかった。
落ち着け、落ち着け、でも胸の鼓動は収まる気配はなかった。
その時、襖の外から声が聞こえた。
「マミ、どうかしたのか」
声をかけてくれたのは秀吉だった。
「入るぞ」
マミは秀吉に顔を見られたくなくて、背中を向けた。
「お館様と何かあったのか」
「何もありません」
「そうか、それならいいが……」
 
 
 
 
秀吉は誰にでも優しい、面倒見の良い性格だ。
マミの頬に涙の跡があることを秀吉は見過ごさなかった。
どうしても気になった秀吉はその足で信長の元に向かった。
「お館様、マミと何かあったのでしょうか」
「別に何もない」
「そうですか、相当動揺しているように見受けられたので、気になりまして」
「なあ、秀吉、マミは信玄が好きらしい、マミの気持ちを俺に向かせるにはどうしたらいい」
「ああ、そうですね、毎日好きだって言ったらどうでしょうか」
「そんなこと言えるか」
「ですよね」
秀吉は信長の座敷を後にした。
その頃、マミは信玄様にあって、このドキドキの正体を探るべく城下へ行った。
こんなところにいるわけないか。
「きゃ」
ぼーっと歩いていたマミは人とぶつかってしまった。
「おい、娘、信玄様にぶつかっておいてきゃはないだろう」
「幸村、お嬢さんに失礼だぞ、大丈夫でしたか、お怪我は?」
マミの顔を覗いた男性はにっこり微笑んだ。
 

 

via LOVE KAZU
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