ラヴ KISS MY 書籍

 

 

第三章 確かめ合う気持ち

 

僕と玲子はこの夜、お互いを求め合った。

 

玲子は剣崎が亡くなった後、徐々に僕に惹かれていった。

 

しかし、僕が戸倉家の長男だと言う事が頭をよぎり、これ以上深入りしてはいけないと、気持ちを抑えていたのだ。

 

そんな時の見合い話に乗ってしまった。

 

白々と夜が明けてきた。

 

「もう朝になっちゃったね」

 

「そうだな」

 

僕は玲子の背中から抱きしめた、そして首筋にキスをした。

 

玲子は感じているであろうと思われる声を漏らした。

 

「玲子、もう絶対に離さない」

 

「戸倉くん」

「光でいいよ」

 

「光」

 

「玲子」

 

玲子と僕は更にお互いを求め合った。

 

しばらくして、玲子が「これからどうしよう、もう帰りたくない」と言い出した。

 

「いいよ、ここにいろ」

 

玲子は僕のマンションに住む事になった。

 

人妻の玲子をこのまま、ここに置いておけるわけがない。

 

なんとかしないと。

 

僕は玲子の親父さんに会いに行く事にした。

 

「戸倉光と申します、玲子さんとの結婚のお許しを頂きたく、伺いました」

 

僕は玲子の親父さんに頭を下げた。

 

「玲子は今、君のところにいるのかな」

 

「はい」

 

「そうか、玲子は人妻だと言う事は承知の上での申し出なんだね」

 

「はい」

 

「君の最終学歴を教えてくれ、それと現在の仕事もだ」

 

僕は最終学歴を教えた、そして現在の仕事も答えた。

「精神科の医者です」

「ほお、君はドクターかい、ご実家もそうか?」

 

「いえ、父親は戸倉建設の社長をしております」

 

「そうかい、その会社は継がなくていいのかな」

 

「いえ、僕は長男なので、本来なら父の後を継がなくてはいけないのですが、自分が医者になりたくて、奨学金で大学の医学部に行きました、弟がいますので、父の後は、弟に任せようと思っています」

 

「君は玲子と結婚して、都築総合病院を継いでくれるのかい?」

 

「お望みとあらば……」

 

「玲子を愛してくれているのかな」

 

「はい、愛しています」

 

「玲子も君と同じ気持ちなんだね」

 

「はい、玲子さんも自分と同じ気持ちだと自負しています」

 

「そうか、しかし、結婚は双方の合意の元だ、玲子は離婚して、それから君と結婚しなくてはならない、ましてや離婚が成立しなくては結婚は出来ん、いくらわしが君と玲子の結婚を許しても、玲子夫婦の問題が解決しなければ先には進めないぞ」

 

「わかっています、では問題が解決したら、玲子さんとの結婚をお許し頂けるのですね」

 

「そうだな」

 

僕は玲子の父親の元を後にした。

 

玲子の旦那は玲子に愛情を感じていないだろうが、都築総合病院の後継者狙いなら、簡単に離婚はしないだろう。

 

何か手立てはないものかと考えながら、玲子の待っているマンションへ向かっていた。

「玲子、帰ったぞ、玲子」

 

玲子の返事がない。

リビングのテーブルの上にメモが置いてあった。

 

『戸倉くん、昨夜は幸せな時間をありがとう、剣崎くんが亡くなってからずっと私を支えてくれて、戸倉くんをすごく頼りにしている自分の気持ちが、愛だと今更ながら気づくなんて遅いよね、でも私は人妻だからこれ以上戸倉くんにお世話になるわけにはいきません、今までありがとう』

 

玲子は旦那の元に帰ったのか。

 

なんで僕を信じて待っていられないんだ。

 

玲子のスマホに連絡したが、繋がらなかった。

 

その頃、玲子は旦那の元に帰っていた。

 

「ただいま戻りました」

 

「人妻が外泊とはいいご身分だな」

 

「離婚してください、外泊の妻は許せませんよね」

 

「離婚したら、晴れて浮気相手と家庭を持つのか」

 

「浮気ではありません、本気です、あなたには愛情のかけらもありませんから」

 

玲子の旦那は僕への嫉妬から玲子を押し倒し、覆い被さった。

 

「やめてください」

「夫が妻を抱いて何が悪いんだ」

 

その時、僕は玲子の元へ急いでいた。

 

嫌な予感が脳裏を掠めた。

 

慌ててインターホンを鳴らした。

 

「誰だ」

 

玲子は乱れた衣服を整えて奥の部屋に入り、鍵をかけた。

 

「どちら様でしょうか」

 

「戸倉光と申します、玲子さんはご在宅でしょうか」

 

「妻は具合が悪くて休んでおります、お引き取りください」

 

「玲子さんのお父様からの伝言を承ってきましたので、開けて頂けますでしょうか」

 

玲子は僕の声に気づいた。

 

「戸倉くん」

 

部屋から出て来て、入り口のオートロックを解錠した。

 

「玲子、何をやっているんだ」

 

僕は玲子の部屋に飛び込んだ。

 

玲子は僕めがけて駆け寄った。

 

僕は玲子の手を引き寄せ「行くぞ」と声をかけて、玲子を連れ出した。

 

僕と玲子は僕のマンションへ向かって駆け出した。

 

ぎゅっと玲子の手を握りしめて、もう二度と離さないと誓った。