ラヴ KISS MY 書籍

 

 

 

第二章 玲子の見合い結婚

 

玲子は休学していた大学を中退した。

 

「戸倉くん、私、お見合いする事になったの」

 

「見合い?」

 

「お父さんの知り合いのお医者様で、都築総合病院を継いでくれるんだって」

 

僕の目の前が真っ暗になった。

 

「ちょっと待てよ、それでいいのか?」

 

「もう、どうでもいい」

 

玲子は納得しないまま、父親の言うなりに見合いして、結婚しようとしている。

 

それでいいのかよ、いや、良くない。

 

僕はなんとか玲子を説得しようと奮闘した。

 

最終目的は自分との結婚だ。

 

僕はこの時、玲子と結婚して、玲子を支えて、都築総合病院を継ぐ事を決めていた。

 

ところが、玲子は見合いの相手と結婚してしまった。

 

「戸倉くん、今までありがとうね、戸倉くんがいなかったら、私は剣崎くんの元に行っていたかもしれない」

 

「何言ってるんだ、これからも一緒だろ?」

 

「私ね、結婚したの」

 

「えっ?」

 

「お見合いしたお医者様と婚姻届提出したの」

 

「嘘だろ?」

 

僕は驚きを隠せなかった。

 

「私ね、そのお医者様と都築総合病院を守っていかないといけないから、

戸倉くんとはもう、会えない、さようなら」

 

玲子は僕にそう告げると、僕に背を向けた。

 

信じられない、既に玲子が人妻だなんて。

 

あまりの急展開に戸惑いを隠せなかった。

 

僕は剣崎の墓参りに向かっていた。

 

「おい、剣崎、僕はお前との約束守れなくなった、ごめん」

 

「戸倉、そんな事ないよ」

 

えっ?、剣崎の声が聞こえた気がした。

 

僕は当たりを見回した。

 

誰もいない、それはそうだろう、まさかな。

 

「戸倉、こっちだよ」

 

僕が振り向くと、そこには剣崎が立っていた。

 

「剣崎」

 

「結婚した事は玲子の本心じゃないってわかってるだろう」

 

「それはそうだが……」

 

「ずっと守ってやってくれ、お前しかいない」

僕は下を向いて考えていた。

 

決心して顔を上げると、剣崎の姿はなかった。

 

「剣崎」

 

僕は大声で剣崎を呼んだ。

 

でも、それ以来、剣崎は現れる事はなかった。

 

わかったよ、玲子を守って行く。

 

まずは医者にならないと話にならないな。

 

僕は猛勉強をしてトップの成績で、卒業した。

 

その間にも、玲子には頻繁に連絡をした。

 

案の定、玲子には笑顔がない。

 

ご主人とは形だけの夫婦の様子だった。

 

ある日の夜、急に玲子が僕のマンションにやって来た。

 

「戸倉くん、私……」

 

玲子は急に泣き出した。

 

「どうしたんだ、玲子、何があったんだ?」

 

取り敢えず、玲子をソファに座らせた。

 

ホットミルクを入れて、玲子が落ち着くのを待った。

 

しばらくして、玲子はゆっくりと話し始めた。

 

「私ね、剣崎くんと付き合っていたとは言っても、お互いに将来は別の人と結婚するって思っていたの、だから、剣崎くんとキスもしていなかった、今の旦那さんとも寝室を別にして、全く触れ合う事もないまま、過ごして来たの、それでよかったのに……」

 

「なんか言われたのか?」

 

「俺たちは夫婦なんだから、今夜から寝室を一緒にするって、すごく嫌だった、だって好きじゃないし、無理だと思ったの」

 

「何もされなかったか、怪我とかないか」

 

玲子は僕の慌てぶりにポカンとして「大丈夫よ、その前に逃げてきちゃった」と玲子はぺろっと舌を出した。

 

「玲子、良かった」

 

そう言って、僕は玲子を思わず抱きしめてしまった。

 

「戸倉くん」

 

玲子はびっくりした様子で、でもしばらく僕の腕の中でじっとしていた。

 

「玲子、僕じゃ駄目か?」

 

「何が?」

 

「玲子の側にいる男」

 

「今も私の側にいてくれてるじゃない」

 

「そうじゃなくて、玲子の結婚相手」

 

「えっ?」

 

「僕が玲子と結婚して、都築総合病院を継ぐよ」

 

「私と戸倉くんが夫婦になるの」

 

玲子は急に笑い出した。

 

「そんなにおかしい事かな」

 

「ごめん、ごめん、ちょっと想像つかなくて」

 

「僕の事、友達以上に思えないって事?」

 

「だって、戸倉くんとキスなんて想像つかなくて」

 

「じゃ、試してみる?」

 

僕は玲子の腰を引き寄せた。

 

じっと見つめあい、僕は玲子の頬に手を当てて、唇にそっと触れた。

 

玲子は目を閉じて、動かなかった。

 

「玲子、好きだ」

 

僕は更にキスの激しさを増した。

 

玲子は思わず、色っぽい声を漏らした。

 

閉じていた目を開けて、僕をじっと見つめた。

 

次の瞬間、玲子は「これ以上は駄目」そう言うと僕から離れた。

 

「なんで駄目なんだ」

 

「帰りたくなくなっちゃう」

 

「なら、ずっとここにいろ」