ラヴ KISS MY 書籍
場所は違えど、売り上げを上げるために俺は必死だった。
ホストの接客がまともに出てしまった。
俺がホストだったことはあゆみは知っていたが、俺の接客を目の当たりにしてヤキモチを妬いたのだ。
あゆみは気分が悪くなったと先に帰った。
友梨ちゃんから事の事情を聞いてあゆみが心配だったが、閉店まで仕事をして、あゆみが待つマンションへ急いだ。
あゆみは夕食の支度をして待っていてくれた。
俺は急いでドアを開け「あゆみ、あゆみ」と姿を探した。
あゆみは奥の部屋から姿を現した。
「凌、お疲れ様でした、今日はすいま……」
あゆみの言葉を遮り、俺はあゆみを抱き寄せた。
「大丈夫か、初日から頑張りすぎて疲れたのかな」
「大丈夫です」
あゆみは俺から離れて、俺の顔をじっと見つめた。
「食事食べましょう」
「そうだな」
食事を終えて、あゆみは疲れたから寝室を別にしてほしいと言ってきた。
「具合が悪いのか?」
「大丈夫です、ちょっと疲れただけですから、おやすみなさい」
そう言ってドアの向こうに消えた。
俺はあゆみがヤキモチ妬いていたなど知る術はなかった。
朝になり、あゆみが起きてこない事を不思議に思い、寝室を覗いた。
「あゆみ、おはよう、支度出来たか?」
あゆみはまだベッドに横になっていた。
「どうした、具合悪いんじゃないのか?」
「ごめんなさい、ちょっと起きる事が出来なくて、お店お願いしてもいいですか」
「わかった、ゆっくり休んでいな」
「すみません」
俺は店に急いだ。
友梨ちゃんは既に入荷を済ませ、準備してくれていた。
「ごめん、あゆみが具合悪くて今日は休ませたからよろしく」
「おはようございます、わかりました、あゆみさん大丈夫ですか?」
「ううん、どうなんだろうな」
「もしかしておめでたですかね」
俺は最近店の事で頭がいっぱいですっかり、子供のことは頭から消えていた。
「えっ?そうかな」
俺は自然と頬が緩んだ。
その頃、あゆみは夕食の買い物に出ていた。
「あゆみさん」
あゆみに声をかけたのはヒカルだった。
「ヒカルくん、これからお仕事?」
ヒカルは店外デートのため待ち合わせの場所に向かっている所だった。
「お客さんと待ち合わせです」
「そうなんだ、久しぶりに見るなあ、その格好」
「麻生さんはスーツは全く着ないんですか?」
「そうだね」
「あっ、お店オープンおめでとうございます、麻生さんも初めから言ってくれたら誤解しないで済んだのに」
「ありがとう、私をびっくりさせたかった見たいね」
「そういえば、今日はお店は休みですか」
「凌にお願いしたの、昨日なんかホスト時代のお客さんが列を作って、おかげさまで大盛況だったんだよ」
「そうですか」
「凌の接客って初めて目の当たりにして、凄いなあって思った、でも……」
「でもなんですか」
あゆみはしばらく黙ったままだった。
「なんでもない、遅れるといけないから早く行って、私と一緒のところ見られたらヤキモチ妬いちゃうよ、そのお客さんはヒカルくんが大好きなんだから」
「はい、それじゃまた」
ヒカルはその場を後にした。
俺と違ってヒカルは感が鋭い奴だ、あゆみの悩みをいち早く見抜いていた。