ラヴ KISS MY 書籍
俺は琴葉の事が気になり、霊体の状態で琴葉のアパートへ行った。
琴葉はすぐに俺に気づいた。
「霊体さん?」
琴葉、ごめん、中村の姿でキスしようとしてしまった。
しかも抱きしめちゃった、でも琴葉も望んでいた素振りだったみたいだが、俺の気のせいかな。
なあ、中村の事、好きなのか?
琴葉はまるで俺の言葉が聞こえているかのように言葉を発した。
「霊体さん、さっきはごめんなさい、驍としてデートしてくれて嬉しかったです、外見は中村さんなのに、私には驍に見えていたの、だからわがまま言っちゃったし、抱きしめて貰いたくて、積極的になりすぎでしたね、私」
そうなのか、よかったあ。
てっきり中村を好きになったのかと焦ったよ。
「霊体さんも黄泉の国へ行くんですよね、いつですか」
期限はあと二ヶ月くらいしかないな。
「それまで、霊体の状態で構わないので、一緒にいてください」
琴葉!
琴葉はまるで俺の言葉が聞こえるかのような会話をしてくる。
俺は琴葉の頬に触れた。
そして、琴葉の唇にキスをした。
全く感触はない、しかし、胸の高鳴りは加速して行く。
グッと腰を引き寄せ密着させる。
琴葉も感じていてくれるのだろう、目を閉じて頬がピンクに染まる。
琴葉、許されるならこのまま、琴葉を黄泉の国へ連れて行きたい。
しかし、それは許されない事だ。
琴葉、俺はお前だけを愛してる、感じてくれ、俺の気持ちを。
しばらく琴葉を抱きしめたまま、時間だけがいたずらに過ぎて行った。
琴葉は俺の腕の中ですやすやと眠りについた。
俺は琴葉のアパートをあとにした。
それから、私は見えない姿、聞こえない声、触れられない唇の驍と、想像の世界にいた。
「驍、ずっと一緒に居たい」
私は自分の腕で私自身を抱きしめた。
そして急に霊体さんを感じなくなった。
「黄泉の国へ行ってしまったの?」
「霊体さん」
何も感じない。
涙が溢れて止まらなかった。
霊体さんは驍なんだ。
私をずっと愛してくれていた。
ちょっとでも疑ってごめんね、驍。
お願い、私の側に来て。
あなたを感じられない人生は悲しすぎる。
驍、私を抱きしめて。
あと二ヶ月で驍は黄泉の国へ行っちゃう。
一緒に黄泉の国へ行く方法はないの?
生きている人間は黄泉の国へはいけない。
でも、自ら命を絶つことは、地獄を彷徨って、黄泉の国へはいけない。
与えられた寿命を生きなければならない。
驍、教えて、私はどうすればいいの?
俺は琴葉の気持ちを感じながらすぐにでも飛んでいきたい気持ちを堪えた。
そう、あと二ヶ月で琴葉を感じることは出来なくなる。
俺は黄泉の国へ行かなければならない。
俺の気持ちを琴葉はわかってくれた。
これ以上、琴葉の側にいると俺は自分がとんでもない行動をしてしまいそうで、恐怖に怯えた。
しかし、悩んでいる琴葉を感じながら、俺は気持ちより先に行動を起こしていた。
琴葉!
俺は琴葉を抱きしめた。
「霊体さん、来てくれたの?」
泣いている琴葉を放っておけないよ。
「驍、あのね、あと二ヶ月で驍は黄泉の国へ行っちゃうんだよね、だから、霊体のままでいいから、一緒にいて?」
琴葉。
そして霊体の俺と琴葉の生活が始まった。
琴葉を抱きしめて眠りにつく。
琴葉は俺の腕の中ですやすやと眠っている。
真夜中に琴葉は目を覚ました。
「驍、キスして」
俺は琴葉にキスをする。
琴葉は目を閉じて、唇を少し開け俺とのキスを味わう仕草をする。
「驍、ギュッとして」
俺は琴葉をギュッと抱きしめた。
琴葉は何かを感じてくれたのか、甘いため息を漏らす。
なんて可愛いんだ。
琴葉はまるで俺が見えているかのような行動を取る。
俺は琴葉の首筋から胸へ唇を移して行く。
琴葉は背中をのけぞり、俺の耳元に唇を押し当て「驍、大好き」と囁いた。
俺は触れた感触は全くない。
琴葉も触れられた感触は感じないだろう。
でも琴葉は気持ちが高揚して感じてくれた様子がありありと伺える。
俺は何もしてやれない。
琴葉は俺への気持ちを自分自身で最高潮に達した。
そんな琴葉の姿を満足して見ている俺は、気持ちだけが高揚していた。
そんな毎日を繰り返し、ある日、琴葉が俺を外に連れ出した。
「驍、買い物へ一緒に行こう」
俺は霊体のまま、琴葉について行く。
琴葉は俺にめっちゃ話かけてくる。
周りの人達からすれば、俺の姿は見えないから、琴葉は独り言を言ってる感じだ。
俺は周りの人間の表情が見える、ひそひそと琴葉の事を「変な人、一人で喋ってるよ」
とか「大丈夫かな」とか口々に言っている。
琴葉はそんなことも気にせず、俺にめっちゃ話してくる。
そんなある日、琴葉が確実に俺の頬に触れたり、俺の目をじっと見てると感じた。
琴葉、俺が見えるの?
でも、他の人は俺の姿は見えない、だから、琴葉が変に思われるよ。
「驍、私、驍の姿が見えるの、顔もはっきりわかるよ」
マジか、何が起きたんだ。
「ゆっくり話してもらえれば、唇が読めるよ」
そうなのか。
「そうなのか、って言ったんでしょ」
俺はビックリして固まった。
「驍、そんなにビックリした顔しないで」
琴葉の霊感には驚かされてばかりだった。